氷河期世代。現在の40代から50代前半を指しますが、就職できず非正規社員として社会に出て現在に至る人、正社員になれたものの途中で脱落し非正規社員になった人……事情はさまざまですが、支援されず忘れらえた存在だったことからロストジェネレーションと呼ばれることも。彼らからは常に支援が後手に回されることへの不平・不満が聞こえてきます。
〈手取り月24万円〉〈家賃4万5,000円〉47歳の非正規男性、年金機構から届いた「警告文」に臨戦態勢の構え「もう我慢の限界です」 写真はイメージです/PIXTA

正社員はこりごり…47歳のおひとり様が非正規社員でいる理由

佐藤大介さん(仮名・47歳)。東京23区内、築40年を超えるアパート・家賃月4万5,000円(バスタブなし・シャワーあり)でひとり暮らしをしています。いわゆるおひとり様です。

 

仕事は飲食店のほか、複数のバイトをかけもち。月収は平均すると30万円ほど、手取りにすると24万円程度だといいます。食費、光熱費、交通費、通信費など、家賃を差し引いた残りの20万円ほどでやりくりします。自炊が絶望的にできないため、コンビニなどの弁当か外食か。ただこの物価高のなか、3食食べるのは至難な業だといい、食事を抜くこともしばしば……アルバイト先では正社員にならないかと誘いを受けることもあるといいますが、給与が多少上がったとしても「正社員なんて、もうこりごり」だといいます。

 

【非正規社員を選ぶ理由】

自分の都合のよい時間に働きたいから…34.7%

家計の補助・学費等を得たいから…18.3%

家事・育児・介護等を両立しやすいから…11.2%

通勤時間が短いから…5.1%

専門的な技能等を生かせるから…8.1%

正規の職員・従業員の仕事がないから…9.6%

※出所:総務省『労働力調査(詳細集計)2023年(令和5年)平均結果の概要』

 

佐藤さんが大学で就職活動をしていたのは、ちょうど就職氷河期といわれていたとき。世間から一流といわれる大学に通っていましたが、それでも希望する会社の内定を勝ち取ることができるのは、ほんのわずかだったといいます。

 

――潰れなさそうな大企業であればどこでもいい、内定がほしい……同級生はみんなそういってましたね。私もそのひとりでした

 

何とか大企業といわれる会社から内定を獲得しましたが、入社するかは迷っていたといいます。というのも、今であればブラック企業と噂される会社。新入社員はみな営業に配属されるが、キツイ仕事のため、1年で半数が辞めると聞いたことがありました。今のようにインターネットで簡単に情報を得られる時代ではありません。噂が本当かどうかは、入社するしかありませんでした。

 

「職がないよりはましだろう」と考え、入社を決めた佐藤さん。噂は本当でした。入社1年目から課せられるノルマ。上司から競争をあおられ、未達の社員はきつく叱責される。さらにペナルティで研修が義務づけられるうえ、減給される――同期であっても出し抜かないと潰れる、そんな危機感から、社内は常に殺伐としていたといいます。

 

――私の代は半年で半数が辞めました。私はせっかく手に入れた正社員のポジションを簡単に手放すことはできないと、何とか耐えました

 

ところが限界に達したのは心でした。ある日、電車に乗ろうにも足が動かず、何とか乗ってみたものの、吐き気がこみ上げ、会社に辿り着かない……適応障害と診断され、30歳を前に会社を退職することになりました。

 

再び働けるようになるまでには1年ほどかかったといいます。