以前は、通夜と告別式を行う「一般葬」が主流でしたが、コロナ禍以降、葬儀の多様化が進みました。海洋散骨も新たな選択肢のひとつ。家族の一部は納得して散骨を行うも、古いしきたりを重んじる親族からの理解が得られず、トラブルに発展するケースもあるようで……。本記事では、Aさん家族の事例とともに変化する弔いのかたちについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
「死んだ妹が可哀そうだ!」67歳年金暮らし母の終生の悲願〈海洋散骨〉をした38歳娘…理解を得られない親族が、船上で肉弾戦【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母親の兄と父親の弟が船上で取っ組み合い

散骨式にはAさんとAさんの父親のほか、母親の友達、そして、父親の弟と母親の長兄が参加しました。母親の実家近くの海で散骨するため、参加してくれるかどうかはわかりませんでしたが、Aさんは会ったこともない母親の長兄に連絡しました。母親の両親はすでに他界していましたため、長兄だけが参加してくれるとのことになりました。

 

ですが、この長兄は港での集合時にはすでにアルコールが入っており、船が出てしばらくすると文句を言い始めました。

 

「勝手に嫁に行って、葬式も出してもらえないなんて妹が可哀そうだよ。事前に相談してくれればこっちで葬式くらい出してやったんだ! お前はなんで葬式も出してやれなかったんだ!」とAさんの父親に掴みかかってきました。

 

Aさんの父親はただ黙って言われるままでしたが、これに父親の弟が参戦します。

 

「おいおい、うちは葬式を出せないわけじゃないぞ! 義姉さんが生前にどうしてもって言ったそうだから、遠路はるばるこんなところまでやってきたんじゃないか!」長兄に真っ向からぶつかっていきます。

 

長兄は「こんなところとはなんだ!」と、船上は大騒ぎ。

 

Aさんや散骨業者のスタッフが間に入り、なんとか散骨式を終えることができましたが、あとでAさんはスタッフから「だから事前にしっかり了解を取っていただくようにお願いしたんですよ」と言われてしまいました。

 

近年は、こういった海洋散骨を希望する人が増えているようです。しかし、散骨についていいイメージを持たない人や、詳しく知らない人はまだまだ多いものです。「ちゃんと葬式を出そう」「金はかけたほうがいい」「一族代々のお墓に入れよう」と昔からのこだわりを持つ人もいます。

 

散骨だけに限りませんが、Aさんのようにトラブルが起きないためには、葬儀や埋葬方式が多様化しているいまの時代には特にしっかり理解してもらうことが重要です。

 

〈参考〉

※ 葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」 第6回お葬式に関する全国調査(2024年)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000009951.html

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表