年末は一時帰宅をして家族と過ごす予定だったが…
家族から老人ホームを勧められたとき、「正直、イラっとした」という金子さん。「老人ホーム=姥捨て山」という、前時代的なイメージを持っていたからです。しかし家族が見せてくれた老人ホームは、「これが高齢者用の施設なのか!」と驚くような豪華さ。
――今どきの老人ホームのなかには、ホテルのような生活が送れるところもあるみたいだよ
どうやら、3人の子どもたちは親に老人ホームへの入居を勧めるために、入念な準備をしていたよう。ただ金子さん、その話に、まずは乗ることにしたといいます。それほど、見せてもらったホームが素晴らしかったのです。
年金は月19万円ほどだという金子さん。予算に合ったホームをいくつかピックアップしてもらい、子どもの付き添いのもと、気に入ったホームへの入居を決定。決め手は、以下の通り。
・自立した人も入居可能で介護施設というイメージが薄かったこと
・それでいて、医療や介護の連携がしっかりしていたこと
・入居者と程よい距離感があること
・試食の結果、一番美味しかったこと
・子どもたちの家からのアクセスがよかったこと
ホームでの生活は、安心・安全。毎日の料理もおいしく、会えば話す程度の知り合いもでき、とても満足するものだったといいます。「ずっとここに住み続ける」という決心もついたので、自宅を売却。相続も見据えての決断だったといいます。
そうこうしているうちに、2024年の年越しはどう過ごすかという話題が出始めるころ。知り合いの入居者はみな、一時帰宅をして家族と年越しをするといいます。金子さんは、夏ごろに長男の家に泊まりに行くという話をしていました。いよいよ具体的に決めなければならないというタイミング。長男に「いつ(家に)行けばいい?」と相談したところ、長男の顔がさっと青くなったといいます。
――まずいと思ったんでしょうね。約束を忘れていました
9連休の長い休みでテンションがあがったのか、年末年始は家族で初海外旅行なのだとか。娘たちは、義実家に帰省、妻と過ごした自宅は売却……金子さん、年末年始に帰るところはなく、老人ホームで過ごすことになりました。
長男家族と過ごす年越しを楽しみにしていただけに、寂しさが余計に募ります。初めからホームで過ごすと決まっていれば、こんな思いをすることはなかったのに……。
――老人ホームに入居してからのほうが家族との距離を感じます。こんなことであれば、老人ホームに入るんじゃなかった
株式会社Speeeが行った調査によると、老人ホームに入居する家族との面会回数で最も多かったのが「月1~3回程度」で40.0%。「週1~2回」が25.2%と合わせると、6割以上が結構な頻度で面会に来ています。
一方で金子さんの場合、自宅でひとり暮らしをしていたときのほうが、頻繁に家族と会っていたといいます。ホームに入ってからは安心したのでしょう、顔を合わせる回数が減ったとか。
家族が老人ホームに入居したらどこかひと段落、という気持ちが湧いてくるとくるでしょう。しかし、それは新たなスタートとして、十分なコミュニケーションは図っていきたいものです。
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