半年ぶりの帰省…チャイムを鳴らすも返事はなく
母親・悦子さんの異変を感じ取った小林さんですが、実家は九州。飛んで帰って確かめる、ということはできません。しばらく歯がゆい思いをしながらも、お盆前に休みを取ることができ、急遽、帰省。父親の葬儀以来、半年ぶりの実家でした。しかし、そこで衝撃的な光景を目の当たりにします。
「ただいま」と呼び掛けても反応はなく、万一のために持っている合鍵で鍵を開け家のなかへ。すると、モノが腐ったような臭いが漂い、思わず鼻を押さえます。とりあえず、臭いの元をたどり台所・ダイニングへ。そこにはいつのものかわからない腐った食べ物が並んでいます。夏の高温で、モノが腐るのも早いのでしょう。ただほんの1日、2日、放置しただけとは思えない状況です。
そんな臭いが充満するなか、悦子さんは、リビングのソファにポツンと座っています。ラジオの音声が流れていますが、それを聞いているわけではなさそうです。何とも奇妙な光景に、一瞬、言葉を失ったといいます。何とか声を絞り出し、
――お母さん!
大きな声で呼びかけると、やっと人の気配に気づいたのか、小林さんのほうに振り返ります。しかし、
――あぁ……
といったきり、また元の姿勢に戻り、ただソファに座っているのです。
反応はほとんどありませんが、見る限り、体調を崩しているわけではなさそうです。そこで母親をまずは置いておいて、家のなかを掃除し、臭いの元をシャットアウト。その間、何度も問いかけても悦子さんはほとんど無反応だったといいます。どうしたものかと思いましたが、とりあえずお腹が空いたと、近所のスーパーで食材を買い、ご飯を作ります。ご飯とみそ汁と簡単なおかず。母親にご飯を作ってあげるなんて、いつ以来ぶりでしょうか。
――お母さん、ご飯作ったけど、一緒に食べないか?
そう問いかけても、やはり無反応……かと思ったら、ソファに座ったまま、悦子さん、さめざめと泣いています。このあと悦子さんと何とか話を聞くことができ、ぼんやりですが状況が見えてきました。