厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は年々増加傾向にあります。平成29年(2017年)には約419万人だった患者数が、令和2年(2020年)には約420万人と微増傾向ですが、長期的な視点で見ると増加傾向は明らかです。特に、気分障害(うつ病、躁うつ病など)や不安障害の患者数が増加傾向にあります。背景には、社会の複雑化やストレスの増大、人間関係の希薄化、情報過多な社会などが複合的に影響していると考えられるでしょう。本記事では、精神科医・村上伸治氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、精神疾患を有する患者の過去を一緒にふり返ってみましょう。
弟が生まれたころ、母親が…35歳・パニック症に苦しむ福祉施設職員が、医師から指摘。病気の原因かもしれない「幼少期の出来事」 (※写真はイメージです/PIXTA)

どんな10代を送りましたか?

ずっと勉強をがんばっていました。親の希望する大学を目指しました。

 

小学生から塾に通い始めて、偏差値も割と高かったので中学受験をし、中高一貫の進学校に入りました。成績は中の上くらいでした。親は昔から「〇〇大学くらい入ってくれたら」と言っていたので、そうしたほうがいいのかなと思っていました。まわりに頭のいい子が多かったので、私も後れをとらないようにがんばりました。

 

なにかをするより勉強しているほうがラク。高校生になって特進コースに進みました。部活やアルバイトをやっている子もいなかったので、私もやらずに勉強していました。勉強をしていると親は納得してくれました。うるさいことも言われなかったので、そのほうがラクだったのです。

 

あなたはどうでしたか? 中高時代の過ごし方についてふり返ってみてください。

 

仲の良い友だちはいましたか?どんなつき合いをしてきましたか?

友だちはいました。ただ、なんでも話すほどではなかったです。遊ぶときや一緒になにかをするときに、自分の意見や希望を言うことが苦手で、いつも相手に合わせてしまうクセがありました。頼まれたり、誘われたりすると断ることができなくて、ときどき友だちといることにとても疲れました。

 

友だちからはいつも頼られていました。あまり親しくない子からも、ノートを貸してと頼まれました。でも自分から友だちに頼るのは苦手でした。頼ったら面倒だと思われるのではないかと思っていました。自分の悩みなどを相談することもありませんでした。その子たちとは大学に行ってからは疎遠になりました。いまはクラス会で会うくらいです。

 

あなたはどうでしたか? 10代の頃から現在まで、どういう友だちづき合いをしてきたかふり返ってみてください。

 

どこで自分はつまずいたのだと思っていますか?

大学に入ってから、サークルもアルバイトも、就活もうまくいかなくなりました。うまくいかない原因がわからなかったです。

 

希望していた大学に入り、親は私に関心をもたなくなりました。やってみたかったアルバイトやサークル活動を始めました。でも、どちらにも馴染むことができませんでした。新しい人間関係を築くのが難しくてやめてしまいました。3年の後半から就職活動が始まりました。まったくうまくいかず、でも、なにが原因で面接で落とされるのかがわかりませんでした。

パニック症、うつ病に…

ある日、電車に乗っていたときに過呼吸になりました。呼吸ができなくなる恐怖を覚え、大学の保健センターに駆け込みました。心療内科への受診を勧められ、通院するようになりました。将来への漠然とした恐怖と不安で、4年生の夏にうつ病と診断されました。うつは治り、就職もしましたが、ストレスがかかるとたびたびパニック症を起こしていました。

 

あなたはどうでしたか? いまの状態はいつから始まったことだと思いますか? これまでのことを整理してみましょう。

 

 

村上伸治

精神科医