「愛着障害」とは正確には小児に限られた病名です。大人の場合、愛着障害とはいえないため、精神科医・村上伸治氏は広く「愛着の問題」と呼んでいます。現代社会の病「大人の愛着障害」とは? 本記事では、同氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、愛着の問題を抱える原因を解説します。
跡継ぎに男児を…祖父母・両親の期待が弟に集中した代々続く造り酒屋の三女、大人になって起きた「大問題」 (※写真はイメージです/PIXTA)

親が別のことにかかりきり

親が子育て以外のことで忙しく、他のことに気をとられて、子どもに関わる時間がじゅうぶんもてないと、結果的にネグレクトと似た状況が生まれます。

 

たとえば、経済的な問題から仕事に多くの時間を割かなければならない家庭もあるでしょう。また親自身になんらかの精神的・身体的疾患があるケースや、病気や障害をもつきょうだいがいて、親がそちらにかかりきりになっているケースもあります。きょうだいの受験や習いごとが忙しく、じゅうぶんかまってもらえないということも考えられます。

 

親が自分の趣味や活動に没頭し、家庭をかえりみないこともあります。なかには、親に自閉スペクトラム症などの神経発達の問題があり、子に関心を示せないということも。親自身は普通に子育てしているつもりでも、子どもは関わり不足により、愛着の問題を抱えることになります。

 

跡継ぎに男児を…三女の孤独

代々続く造り酒屋の三女。「跡継ぎは男児」という意識が強く、3人目の女の子はあまり関心をもたれませんでした。しかもすぐ下に男の子が生まれたので、祖父母や両親の期待や注目は弟に集中し、彼女はいつも孤独だったそうです。「世話はしてもらったけど愛してはもらえなかった」という感覚は、大人になっても拭うことはできません。

養育者側にこんなことはなかっただろうか?

・親にアルコールや薬物などの依存症があった。

・親が精神的・身体的疾患を抱えていた。

・趣味や学業、宗教活動、政治活動などに没頭し、あなたにかまう時間がとれなかった。

・仕事が忙しく、あなたとともに過ごす時間がほとんどとれなかった。

・親が自閉スペクトラム症など神経発達の問題を抱えていた。

・手のかかるきょうだいや、介護が必要な祖父母などがいた。

・離婚調停中など、家庭の問題を抱えていた。

・きょうだいの受験や習いごとなどかかりきりだった。

・新しい恋愛に没頭していて、あなたにかまわなかった。