厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は年々増加傾向にあります。平成29年(2017年)には約419万人だった患者数が、令和2年(2020年)には約420万人と微増傾向ですが、長期的な視点で見ると増加傾向は明らかです。特に、気分障害(うつ病、躁うつ病など)や不安障害の患者数が増加傾向にあります。背景には、社会の複雑化やストレスの増大、人間関係の希薄化、情報過多な社会などが複合的に影響していると考えられるでしょう。本記事では、精神科医・村上伸治氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、精神疾患を有する患者の過去を一緒にふり返ってみましょう。
弟が生まれたころ、母親が…35歳・パニック症に苦しむ福祉施設職員が、医師から指摘。病気の原因かもしれない「幼少期の出来事」 (※写真はイメージです/PIXTA)

小さいとき、どんな子どもでしたか?

しっかりした子だと言われてきました。長女です。4歳のときに弟が生まれました。そのとき母から「もうお姉ちゃんなんだからね」「ちゃんとしてね」と言われたことを覚えています。母は学校の教師として働いており、つねに忙しくしていました。父も仕事が忙しく、夜遅く帰宅することがほとんどでした。両親とともに過ごす時間は週末くらいだったような気がします。実際はどうだったのかあまりよく思い出せません。

 

弟は少し手がかかる子で、母はさらに忙しくなりました。私も弟の面倒を見ないといけないのかなと思い、母のことを手伝いました。父は家事にあまり参加していなかったように思います。ちょっと遠い存在でした。困ったことがあっても、親に頼るのはダメなのかなと思っていました

 

あなたはどうでしたか? 小さいときのあなたについて思い出してみましょう。

 

親御さんは厳しかったのですか?

両親から怒られた記憶はあまりありません。親からも周囲の大人からも「お手伝いをしてえらいね」とほめられることが多かったと思います。母は仕事や弟のことで大変そうだったので、迷惑をかけないように気をつけていました。小学生のときはピアノを習っていて、ピアノを弾くと母は喜ぶので練習をがんばりました。

 

学校の勉強はできるほうでした。よく委員に選ばれました。「面倒見がよく、勉強もできる子」だと見られていました。ほめられてもあまり嬉しいとは思いませんでした。いつもほめられていたので、当たり前のことでした。逆に「もっとがんばらなければいけない」と思っていました。

 

あなたはどうでしたか? 小学生のときのあなたと親御さんとの関係について思い出してみましょう。

 

小さいとき、どんなことが怖かったですか?

失敗することがとても怖かったです。母にがっかりされるのが怖かった。

 

小さいときに恐怖を感じたのは「ピアノで失敗すること」。初めてのピアノ発表会で、私の前に舞台に出た子が、緊張のため弾けなくなってしまい、泣き出してしまったのです。それを見たら怖くなり、足がガクガク震えたことを覚えています。母がその子を見て、残念そうな顔をしたので、私も弾けなかったら、がっかりされるのかなと思いました。

 

その後もピアノはがんばりました。小学5年生までやりました。その後は受験があるからやめてもいいと言われました。ピアノが好きだったのかどうかは自分でもよくわかりません。それをやるのが当たり前のことだったので、好きかどうかはあまり考えませんでした。

 

あなたはどうでしたか? あなたが小さいときにどんなことが怖くて、いやだと思っていたのか思い出してみましょう。