厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患を有する総患者数は年々増加傾向にあります。平成29年(2017年)には約419万人だった患者数が、令和2年(2020年)には約420万人と微増傾向ですが、長期的な視点で見ると増加傾向は明らかです。特に、気分障害(うつ病、躁うつ病など)や不安障害の患者数が増加傾向にあります。背景には、社会の複雑化やストレスの増大、人間関係の希薄化、情報過多な社会などが複合的に影響していると考えられるでしょう。本記事では、精神科医・村上伸治氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、精神疾患を有する患者の過去を一緒にふり返ってみましょう。
弟が生まれたころ、母親が…35歳・パニック症に苦しむ福祉施設職員が、医師から指摘。病気の原因かもしれない「幼少期の出来事」 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分を追い詰めがんばってきた

失敗して落ち込むことは誰にでもあります。でもそのたびに大きなダメージを受け、うつ病や不安症などの精神的問題が生じているなら、いつからいまの思考パターンができたのか、幼少期の記憶を思い出してください。自分を追い詰め、無理な“がんばり”を強いてきた理由を見つけていきましょう。

A山A子さんのケース

パニック症とうつ病で精神科にかかっていたA山A子さん。治療中に医師から幼少期のことを指摘され、幼少期からいままでのことをふり返ってみることに。あなたもA子さんの受け答えを参考に、自分自身についてふり返ってみよう。

 

出所:
[図表]A山A子さん 出所:『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)

 

いまのあなたは、どういう状態にありますか?

がんばらないといけないと思っています。でもすぐに調子を崩してしまって……。

 

薬で抑うつが落ち着いたものの…

結婚して出産し、育休を終えて職場に復帰しました。しかし、職場の状況が変わり、上司が病気で休職してしまいました。それまで頼りにしていた人がいなくなり、業務がうまく回らなくなりました。

 

私も仕事を抱え込み、精神的に追い詰められる日々。仕事と家庭の両立に疲弊し、精神的な負担は増すばかりでした。抑うつがひどくなり、限界を感じた私は精神科を受診し、薬物療法を受けました。薬を服用することで一時的には症状が落ち着き、少し安心しました。

 

過去に目を向けてみると

「このままじゃいけない、もっとがんばらなければ」と思い、再び気力をふるい立たせ、日常生活や仕事に戻りました。しかし、それから1ヵ月も経つと、またしても同じ症状が再燃してしまいました。頭が重く、心が沈む感覚が襲い、集中力も続かなくなりました。

 

医師に相談するなかで、医師から私の心の奥深くにある感情について指摘がありました。幼少期からのできごとについて、ふり返ってみたらどうかと言われました。

 

あなたはどうですか? いまのあなた自身の状態について言葉にしてみましょう。