年金だけではどうやら暮らしていけないらしい……そのような認識が広がり、早め早めの資産形成が当たり前になっているなか、貯蓄額が目標に達し、悠々自適な老後生活に突入する高齢者たち。しかし、一度手に入れた生活がずっと続くとは限らないようです。
よし、2,000万円貯まったぞ…「年金2人で月32万円」、余裕の老後を夢見た「65歳夫婦」の大誤算。SNSから始まった「老後崩壊の危機」 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後も資産形成が必要!? 高めの警戒心もなくなり…

日本年金機構によると、一般的なモデル夫婦の1ヵ月の年金受取額は23万0,483円。この場合、サラリーマンと専業主婦という夫婦ですが、吉田さん夫婦は共働き。さらに60歳定年で再雇用となり、プラス5年、お互いが厚生年金に加入していた夫婦です。モデル夫婦よりもはるかに多くの年金を受け取るであろうことは明らか。実際、年金額は月いくらくらいなのでしょうか?

 

*平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

 

――月にすると、2人で35万円ほど。私が20万円ほどで、妻が15万ほどですね

 

手取りにすると月30万円弱。十分すぎる年金に加え、将来に不安などないだけの貯蓄額。羨ましい限りです。そう思っていると、ポツリと話し出す吉田さん夫婦。

 

――あれは、明らかに詐欺でした。今となってはわかるのに、なぜ気づくことができなかったんだろう

 

詐欺とは、穏やかな話ではありません。一体何があったのか……

 

吉田さん夫婦が遭遇したのは投資詐欺。もともと用心深い性格という吉田さんですが、巧妙な手口でまんまと引っかかってしまったといいます。最初の接触はSNS。ともにお金の勉強をするサークル仲間、といった雰囲気から関係は始まったといいます。しばらくして、「老後資金は2,000万円で足りるのか」という話になったとか。そして次第に「老後資金は2,000万円では足りない」という確証に変わっていき、そこで「老後も資産形成を続けるべき」という展開になっていったのだとか。

 

どうやら、相手は相当お金に詳しいらしい。信じてついていけば、老後の不安は払拭できる。そう考えるようになると、初めはファンドへの少額投資を勧め、次第に大きな金額へと……このあとの展開はご想像の通り。これが詐欺だと気づいたときには、300万円程度を費やしていたといいます。

 

――全財産失うことになっていたかもしれない……そう考えると、数百前円損しただけでよかった

 

警戒心が強いという人ほど、一度、警戒心が解けると信じこむ傾向が強いため、実は詐欺に騙されやすいともいわれます。警視庁の資料によると、利殖勧誘事犯の相談件数は、65歳以上が17.7%と6人に1人の割合。さらに騙されていると気づいていない場合もあるので、実際に投資詐欺の被害にあっている高齢者さらに多いと考えられます。

 

そもそも株やファンド、FXや仮想通貨などを扱うには、金融庁への業者登録が必要で、金融庁のサイトでは登録業者一覧をチェックできます。まずはきちんと登録されているか、確認することが第一歩。また少しでも怪しいと感じたらネット検索。すでに被害が生じているのであれば、商品名や業者名がヒットするはずです。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査2023年(二人以上世帯調査)』

日本年金機構『令和6年4月分からの年金額等について』

警視庁 『令和5年における生活経済事犯の検挙状況等について』