適切な事業目的設定の重要性
事業目的は、会社の運営方針や活動範囲を示す「顔」となるものです。適切に設定することで、次のメリットが得られます。
・会社の信用力向上:銀行や取引先は、事業目的から会社の方向性や信頼性を判断します。目的が不明確だと、取引先が不安を感じる可能性があります。
・法的リスクの回避:定款に記載のない事業を行うことは法律上問題となる可能性があるため、実際に行う予定の事業を正確に記載することが大切です。
・銀行口座開設の円滑化:事業目的が明確であれば、銀行審査がスムーズに進みます。不必要に幅広い目的を記載すると、かえって疑念を招く場合があります。
事業目的は「実際に行う事業」を中心に記載する
「将来を見据えた幅広い事業目的を設定すること」が推奨される場面もありますが、あまりに多岐にわたる目的を記載すると、次のリスクが発生します。
(1)会社の評価に影響を与える
・何をしている会社かわからなくなる
事業目的が過剰だと、「この会社はどの分野で専門性を発揮しているのか」が不明確になります。特に取引先や銀行の担当者からは、「信用できない」という印象を持たれる可能性があります。
(2)銀行審査やヒアリングの煩雑化
・ヒアリングの頻度が増える
銀行口座を開設するときは、事業目的に基づいてヒアリングが行われます。目的が多いと、「本当にこれらの事業を行うのか」「資金がどう使われるのか」といった質問が増え、審査が長引くことがあります。
・場合によっては口座開設に悪影響
銀行は資金洗浄リスクや不正利用を避けるため、会社の活動内容を厳しく審査します。目的が幅広すぎると、不審に思われ、口座開設が難しくなる場合もあります。
(3)書きすぎによる実務的な支障
・取引先からの疑念を招く
例えば「ITサービス」だけでなく「不動産管理」や「飲食業」といった異なる分野の事業を含めて記載すると、「専門性がなく、実績が曖昧な会社」と評価されるリスクがあります。実際に行っているのであれば記載することに問題はありませんが、「これから行うかもしれない」というだけで異なる分野の事業を多く記載するのはデメリットしかありません。
事業目的を設定するポイント
次のポイントを押さえた事業目的設定を行うことで、リスクを抑えつつ柔軟性を確保することが可能です。
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1.実際に行う事業をベースに設定
まずは、現在行っている事業や設立後に確実に始める事業を正確に記載します。これにより、会社の方向性を明確に示すことができます。
2.将来を見据えた幅を持たせる
将来的に行う可能性が高い事業も、必要最低限で追加します。例として、「ITサービス」の範囲を拡大したい場合は「関連する教育事業」など、関連性を持たせた形で記載します。
3.曖昧な表現は避ける
「全般的な事業」などの表現は、具体性に欠けるため避けるべきです。具体的かつ簡潔に記載することが重要です。
4.銀行や専門家に相談する
事業目的を決定する際には、司法書士などの専門家に相談し、設立後の影響を含めてアドバイスを受けると安心です。
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事業目的の設定は、会社の運営基盤を作るうえで非常に重要なポイントです。「実際に行う事業」を中心に明確に記載することを基本とし、将来を見据えた幅を持たせる形で設定することが理想です。また、あまりにも広範な事業目的を記載すると、信用を損ねたり、銀行審査で不利になったりすることがあるためご注意ください。
専門家に相談しながら適切な事業目的を設定し、設立後のスムーズな運営と発展に繋がる基盤を築きましょう。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士