【会社設立】株式会社と合同会社、どちらを選ぶ?ビジネスの明暗を分ける“最初の決断”【司法書士が解説】

ポイント②:適切な会社形態の選択

【会社設立】株式会社と合同会社、どちらを選ぶ?ビジネスの明暗を分ける“最初の決断”【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社設立は、新たなビジネスをスタートさせる大切な一歩です。しかし、手続きや準備を誤ると、思わぬトラブルやコストが発生し、事業運営に悪影響を及ぼすことがあります。会社設立で失敗を防ぐためのポイントとして、今回は「適切な会社形態の選択」を見ていきましょう。設立支援実績1,000社以上の加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。

株式会社や合同会社の違いを理解し、自社に合った形態を選ぶ

会社設立において、どの会社形態を選ぶかは最初の重要な決断です。特に「株式会社」と「合同会社」は選択肢としてよく挙げられますが、どちらを選ぶかで将来の事業運営に大きな影響を与えます。ただ単に設立費用の差だけで判断するのではなく、事業の目的や成長計画に基づいて選択することが成功へのカギです。ここでは、より深い視点から両者の違いを掘り下げ、自社に最適な形態を選ぶための具体的な指針をお届けします。

株式会社:信頼と成長性を重視する人向け

株式会社は、日本の会社形態のなかで最も一般的であり、社会的信用と成長性を重視するビジネスに適しています。多くの企業がこの形態を選ぶ理由は、その明確なメリットにあります。

 

【メリット】

・信用力で取引がスムーズ

株式会社は、その認知度と信頼性から、取引先や金融機関との関係が円滑に進むことが多いです。特に、大手企業や公共機関との取引を視野に入れている場合は有利です。

 

・柔軟な資金調達

株式を発行して広範囲な資金調達ができます。将来的にベンチャーキャピタル(VC)からの投資を受けたり、株式公開(IPO)を目指したりする場合にも最適です。

 

・経営基盤の強化

取締役会や株主総会の仕組みがあり、大規模な組織運営や透明性の確保が容易です。これにより、株主や取引先からの信頼がさらに高まります。

 

【デメリット】

・設立コストが高い

定款認証費用や登録免許税を含めると設立費用は20万円以上になるため、初期コストが高くなります。

 

・運営が煩雑

株主総会、決算公告など、法律で義務づけられた運営手続きが多いため、小規模事業には負担となる場合があります。

 

【株式会社が適しているのはこんなケース】

・将来的に大規模な事業展開を目指している。

・複数の株主や投資家から資金を調達する予定がある。

・取引先や金融機関との信頼関係を重視している。

合同会社:柔軟性とコストパフォーマンスを重視する人向け

合同会社は、2006年に導入された新しい会社形態で、設立費用が安く、運営の自由度が高い点が特徴です。特に小規模事業やスタートアップに適しています。

 

【メリット】

・設立費用が安い

登録免許税は6万円で済み、定款認証が不要なため、株式会社に比べて初期コストを大幅に抑えられます。

 

・シンプルな運営

取締役会や株主総会が不要で、迅速な意思決定が可能です。事業運営の自由度が高く、経営がスムーズに進みます。

 

・利益配分の自由

出資比率に関わらず、利益を柔軟に分配することができます。家族経営や仲間との共同事業に最適です。

 

【デメリット】

・社会的信用がやや劣る

株式会社と比べると認知度が低く、取引先や金融機関からの信用を得るのに時間がかかる場合があります。

 

・資金調達に制限がある

株式を発行できないため、自己資金や融資が主な資金調達手段となります。

 

【合同会社が適しているのはこんなケース】

・小規模でコストを抑えながらビジネスを始めたい。

・利益配分を柔軟に設定したい。

・迅速な意思決定を求める事業に従事している。

株式会社と合同会社を選ぶ際の基準

どちらを選ぶべきか迷った場合、次の基準を参考にするとよいでしょう。

 

◆設立費用で選ぶ

・株式会社:約20万円以上

・合同会社:約6万円(→費用を抑えたい場合に最適)

 

◆事業規模で選ぶ

・株式会社:大規模な事業や複数の出資者がいる場合に適している。

・合同会社:小規模事業やスタートアップに向いている。

 

◆社会的信用度で選ぶ

・株式会社:取引先や金融機関の信頼を得やすい。

・合同会社:知名度や信用度は株式会社に劣る場合がある。

 

◆成長性で選ぶ

・株式会社:資金調達の幅が広く、事業拡大に向いている。

・合同会社:成長性よりもコストや自由度を重視する場合に最適。

実際の失敗事例から学ぶ

会社形態選択の重要性を理解するために、次の失敗例を参考にするとよいでしょう。

 

・失敗例1)コスト重視で合同会社を選んだが、信用不足で取引先を失った

→信用が重要な業種では、初期費用をかけてでも株式会社を選ぶべきです。

 

・失敗例2)将来の計画を考慮せず株式会社を選び、運営コストに苦労した

→小規模事業では、合同会社の運営コストの低さを活かすほうが賢明です。

専門家の活用でミスを防ぐ

どちらを選ぶか迷ったら、司法書士や税理士といった専門家に相談しましょう。形態選択のポイントだけでなく、設立後の運営や税務面についてアドバイスを受けられます。

 

会社形態の選択は、事業のスタートにおける重要な一歩です。設立費用や運営コスト、成長性など、それぞれの特徴をしっかり理解し、自分のビジネスに最適な形態を選びましょう。特に将来の事業計画を考慮した選択を行うことで、長期的に安定した経営基盤を築くことができます。専門家の力を活用し、最適なスタートを切りましょう。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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