
60歳定年後の再雇用…「給与大幅減」よりも大変だったこと
――あと5年は働くぞ!
そう意気込んで再雇用の道を選んだ、大手食品会社で働く大山浩二さん(65歳。仮名)。60歳で嘱託社員となり、給与は4割以上も減少し、月収33万円、年収で540万円ほどに。ただ継続雇用で何よりも辛かったのは、給与減ではないと大山さん。
――やはり大変なのは人間関係ではないでしょうか。それまで会社では目上だった人間が、定年を境に部下になるのですから。お互い「どう接したらいいんだろう……」という雰囲気で、やりにくいといったらありゃしない
再雇用となった定年上司に対して、表面上はリスペクトしているような年下上司たち。しかし陰では「老害」など、散々ないわれようであったことを知っています。そんなことに、傷ついたり、怒ったりしても意味がありません。40年以上の会社員人生で身に着けた鈍感力で華麗にスルーしていったといいます。
何よりも仕事を辞めるわけにはいきません。前述のとおり、定年から年金受給までは5年の歳月があります。繰上げ受給という制度もありますが、受給額が減ってしまうため、大山さんとしては利用する気になれません。また年金の受給までの5年を耐えることができれば、そのぶん、65歳から受け取る年金額も増えていきます。
大山さん、60歳時点で受け取れる年金は、厚生年金が付き13.0万円。基礎年金を合わせると、月19.8万円ほどでした。その後、再雇用で嘱託社員となり、年下上司からはさげすまれ惨めな思いをするときも耐えに耐え、何とか5年間働き、年金受給年齢の65歳に。そこで受け取れる年金は厚生年金で13.7万円。基礎年金と合わせると月20.5万円と、5年の我慢の成果は月7,000円、年8万4,000円でした。
――月7,000円……
そうつぶやく大山さんの目には涙が……話を聞いていくと、まさかの年金額に少々拍子抜けしたものの、収入の空白期間を埋めることができ、貯金を増やすこともできたとか。年金以外の収入がなくなる老後の不安はゼロにはなりませんが、5年間働いたことで低減できたことは大きいといいます。
[参考資料]