料理好きの「82歳母」にぴったりの老人ホームだと思っていたが…
82歳になる母・佐藤美智子さん(仮名)が老人ホームに入居しているという長野明美さん(56歳)。美津子さんは夫を亡くして5年が経ち、ひとり暮らしに不安を感じていたところ、明美さんの勧めで1年前から老人ホームに入所しています。
入所する前にはいくつかのホームを見学。条件として挙げていたのは、何かあったときにすぐに駆けつけることができるよう、明美さんの自宅から車で1時間圏内にあること。費用は20万円以内であること。これは月15万円だという美智子さんの年金から逆算し、無理なく入所できる金額として算出したものでした。また料理好きの美智子さん。できれば自室に小さくてもいいからキッチンがあるといい……このような条件に合致したのが、いま入所している施設だといいます。
住み心地は上々。ほかの入居者とも仲が良く、充実した日々のレクリエーションで楽しい日々を過ごしていたといいます。明美さんも母が充実した日々を送っているようでひと安心……のはずでした。
ある朝、明美さんが起きて携帯電話を確認すると、美智子さんから着信が10件ほど入っていてぎょっとします。着信音がミュートになっていて、まったく気が付かなかったようです。さらにラインにもメッセージが入っていました。
――お願い、助けて!
その切羽詰まったメッセージに、急いでホームに駆けつけたという明美さん。そこには想像を絶する光景が広がっていました。以前、面会に来たときは落ち着いた雰囲気でしたが、スタッフが駆け回り、慌ただしい空気であふれています。また清掃も行き届いていないのか、床にゴミも目立ちます。前はそんなことなかったのに……。
さらに美智子さんの居室を訪れると、同じように部屋が雑然とし、ゴミも溜まりに溜まっています。美智子さんに話を聞くと、最近はどんなにスタッフを呼んでも、全然来てくれないと訴えます。
実は、少しずつ認知症の症状が出ていた美智子さん。昨夜は、夜間の不安や混乱から助けを求めていたことがわかりました。明美さんに連絡をする前にも、何度もスタッフを呼んだものの、誰も来てくれなかったとか。さらに明美さんも電話に気づかず……悪いことをしたと、明美さんも反省だったといいます。
その後、施設長との面談で、大量離職によるスタッフ不足により、適切なケアが提供できていない実情が判明。それにより母はより不安定な状態になり、周囲のスタッフとのコミュニケーションもままならない状況だったのです。状況の改善はいつになるのか尋ねても、「頑張って採用活動をしているんですけど……」と施設長。今、このホームには安心感がありません。退所も視野に検討しているといいます。
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