インフレや金利上昇が話題となるなか、NISAの拡充という国の後押しもあり、投資に興味を持つ人が増えています。一方で、日本人の投資に対する正しい理解が進んでいるとはいえないでしょう。本記事では三浦さん(仮名)と石井さん(仮名)の事例とともに、NISAとFXでの運用についてニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
遅くに授かった息子のため…世帯年収800万円の40歳目前夫婦「節税のつもりが大損」。初孫に大喜びの親から「毎月3万円」の援助も、逃した巨額のチャンス【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

NISAは短期間でやめることがもったいない

まずNISAのおさらいですが、正式名称「少額投資非課税制度」のとおり、その最大の魅力は投資によって得られる利益には通常20.315%(申告不要選択の場合)が課税されるのに対し、NISA枠で運用した場合は全額非課税となることです。しかしそれは利益が発生した場合の話です。当然のことながら、投資行為そのものには損失が発生するケースもあります。

 

よって金融庁は、NISAのなかでも特に「つみたて投資枠」に関しては「長期の積立・分散投資に適した投資信託」だけを購入できるようにしています。証券市場は長い目で見ればその途中に凸凹はあろうとも、基本は世界経済の成長に準じていきます。そのため、三浦さんのようにわずか数ヵ月の結果に一喜一憂してせっかく始めた積立投資をやめてしまったことは非常にもったいない話なのです。

単なる外貨預金と比較してFXのほうが優位な点

FXというとどうしても「高いレバレッジで短期売買を繰り返して利益を上げていくもの」という印象が強いですが、それはFXという箱の1つの利用法にすぎません。自分の金融資産に米ドルなどの外貨建て資産を一部組み入れたいと思うのであれば、それにはいくつもの手段がありますが、少なくとも銀行での外貨預金と比較するとFXにはいくつもの優位点があります。

 

1.外貨を買う手数料(スプレッド)が圧倒的に安い

預金を始めるにあたり預金を銀行で買うと、米ドルであれば通常片道0.5~1円の手数料を取られます。一方で、FXで米ドルを買う場合の手数料は、競争力のある業者の場合、片道0.01円にも満たない圧倒的な低コストで手当することが可能です。

 

2.為替差益が出た場合でも税率を20.315%で常に固定できる

銀行での外貨預金の場合、利息は所得税と住民税を併せて20.315%の源泉分離課税となりますが、為替差益は総合課税の対象となってしまいます。他所得の状況によっては、住民税と併せて最大55.945%という高い税率で課税されてしまうこともあるのです。

 

3.為替差損が出た場合では3年間損失繰り越しができる

銀行外貨預金では為替差損が出たとしても、その損失額は翌年に繰り越すことも、他所得との損益通算もできません。一方FXの場合ですと、損失は最大3年間の繰越が可能で翌年以降のFX取引での利益(+ほかの先物取引)との損益通算が可能です。つまり、不必要に高いレバレッジでハイリスク・ハイリターンの短期売買を繰り返すのではなく、米ドルやユーロなどの先進国通貨で1倍(もしくはせいぜい2~3倍)程度のレバレッジで外貨をスワップポイントと呼ばれる利息分を地道に稼ぐ長期運用するのであれば、FXという「箱」は決して忌み嫌われる性質の利用場所ではないということです。

 

以上より、NISAは暴落しませんし、FXも溶けません。ともに正しく利用できれば投資家にはとても有利な「箱」だと考えます。

 

 

山田 信彦

ニックFP事務所

代表