「今年も終わりだねぇ」という会話が生まれる風物詩的光景。そのひとつが宝くじと、売り場に並ぶ行列ではないでしょうか。「もし1億円当たったら……」そんな夢を見ながら、寒空のなか並んでいますが、なかには切羽詰まった人たちの姿も。
宝くじにすがるしか…〈年金月5万円〉〈家賃2万円〉75歳の高齢女性、西銀座の宝くじ売り場の行列に並び、3,000円に夢を託す「絶望的老後」の実情 写真はイメージです/PIXTA

雇止めで失業4ヵ月…年金月6万円で生きている高齢女性

多くの人が夢を求めて買い求める宝くじ。行列に並ぶのは、やはり仕事を辞めて自由時間の多いシニアが中心。ただ切実な思いで並ぶ人の姿も。山本美恵子さん(仮名・75歳)。是が非でも当てたいという思いで並んでいるといいます。

 

――もう、宝くじにすがるしかないですよ

 

月の年金が月6万円弱だという山本さん。4ヵ月前に雇止めとなり失業。仕事を探している最中ですが、やはり年齢がネックでなかなか新しい仕事が決まらないといいます。現在の住まいは都営住宅で家賃は2万円ほど。光熱費、通信費、食費……毎日の生活に必要なものだけで年金は使い果たし、余裕など少しもありません。さらに先が見えない値上げがじわりじわりと山本さんを追い詰めます。

 

――年金だけだと本当に生活が苦しくて。賭けに出るしかないですよ

――仕事もなければお金もない。人生の終わりが見えているのに、こんな思いをするなんてね

 

行列に1時間並んで買ったという10枚の宝くじ。3,000円を捻出するために、結構、食費を抑えたといいます。本当に宝くじに託すしかない、というほど切羽詰まっているといいます。山本さん、「冷蔵庫に入れておくと当たると聞いたの。早く帰って入れなきゃ」と、家路を急いでいました。

 

総務省『労働職調査』によると、2023年(平均)、75歳以上は1,994万人。そのうち労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は230万人。つまり働いているか、働いていないかは別として、働く意思があり、働ける状態にある75歳以上は230万人いるといえます。そして完全失業者は2万人。完全失業率は0.9%と、ほかの年代と比べると低くなっていますが、山本さんのように年齢を理由に断られることが多いといいます。

 

また厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、山本さんのように月の年金受取額が6万円を下回るのは、老齢基礎年金受給者では50.2%を占め、1,700万人弱。そして老齢厚生年金受給者では3.0%で48万人ほど。結構な数の高齢者が低年金といわざるを得ない状況です。

 

資産背景は人それぞれなので、低年金=生活が苦しいとは限りませんが、山本さんのように生活に困窮している人も珍しくないでしょう。そのなかには大逆転を目指し、宝くじ売り場の大行列に並ぶしかないシニアもいるようです。

 

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[参考資料]

一般財団法人日本宝くじ協会『宝くじ世論調査』

総務省『労働職調査』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』