子育て中はフルタイムで働けない…生活費に苦しむシングルマザー
東京郊外に住む33歳のシングルマザー・Aさん。彼女は手取り13万円という限られた収入のなかで、3歳の息子を育てながら自身の奨学金を返済している。Aさんは、大学在学中に月12万円の奨学金貸与を受けており、卒業時には総額576万円の借金を抱えることになった。現在は、毎月約2万6,000円を返済しているが、この支出が生活費に大きな負担を与えている。
出産後すぐに離婚したAさんは、それまで勤めていた都心にある会社を辞めて、家から自転車で15分の距離にある会社でのパートタイム勤務を選択した。実家の両親とは折り合いが悪く頼れず、保育園の送り迎えや病気時の対応を考慮すると、柔軟な働き方が必要だからだ。しかし、パートタイム勤務では収入が限られ、家賃や光熱費、食費をまかなうのがやっと。元夫からの養育費も滞りがちだ。貯金どころか、予期せぬ出費にも対応できないのが現状である。
息子の成長とともに保育料や学用品、衣服などの出費が増加するなかで、Aさんは「息子には、自分と同じように奨学金の返済に追われない生活を送らせたい」と願っているが、そのための教育費を捻出するのは不可能に思えると嘆く。
子どもにも同じ負担を負わせてしまうかもしれない
Aさんは、奨学金返済の負担を軽減するため、日本学生支援機構(JASSO)の減額返還制度を利用している。この制度は、返還月額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2のいずれかに減らして返還できる。ただし、その分返還期間が延びるため、返還総額が減るわけではないという点に注意が必要だ。
奨学金制度の減額返還や返還期限猶予制度は、一時的な救済には役立つものの、生活の安定には結びつかない。特に、Aさんのようなシングルマザー家庭では、家賃や食費、光熱費だけではなく、子どもの教育費や医療費など複数の課題が重なり、家計が逼迫するケースも少なくない。このような状況を踏まえると、奨学金の貸与基準の緩和や増額など単なる「貸す側」の制度の見直しでは限界があるため、「返す側」を支援する制度の強化が急務と考える。
Aさんは、「いまはなんとかやりくりできているけれど、将来が見通せない」と弱音をもらす。急な出費に対応するための予備費すら確保できず、家計は常に綱渡り状態なのだ。病気や予期せぬトラブルが起きたらどうしようという不安が、重くのしかかる。