厚生労働省の調査によれば、母子家庭の約70%が養育費を受け取っていない。養育費未払いの問題に伴い、自身の収入だけで生計を維持しながら、育児や家事をすべて1人でこなさなければならないシングルマザーは少なくない。さらに、奨学金の返済がある場合、毎月の支出が家計を大きく圧迫し、生活全体に与える影響は多大なものだ。本記事では、シングルマザーのAさんの事例とともに、奨学金返済の実態について、アクティブ アンド カンパニー代表・大野順也氏が解説する。
月2万6,000円がツライ…手取り月13万円、パートで働く“33歳シングルマザー”の嘆き「子どもにも同じ思いをさせてしまう」

早くフルタイム勤務に戻りたい

Aさんは、息子が小学校に入学するタイミングで、フルタイム勤務に戻ることを検討している。「いまは急な体調不良への対応や、長時間勤務によって息子と過ごす時間が減り、寂しい思いをさせてしまうのではないかという不安から、パートを選択せざるを得ない。ただ、子どもが成長するにつれて必要なお金が増えるため、早いうちにフルタイム勤務に戻りたいというのが本音です」と語る。

 

こうしたジレンマを抱えるシングルマザーは少なくなく、育児と経済的自立を両立させるためのサポートが必要である。企業のなかには、社員の貸与型奨学金の一部または全額を代理返還する取り組みを行うところもある。経済的な負担を軽減することで生活を支援し、社員が最大限活躍できる環境づくりをサポートしているのだ。

 

いまや大学生の2人に1人が利用している奨学金。まずは返還支援を行う企業の存在について知ってもらいたい。こうした支援制度の周知と、地方自治体や民間企業による支援の拡充が、親世代の負担を軽減し、これからの未来を支える子どもたちが安心して教育を受けられる社会の実現につながるだろう。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者