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あいまいな進学動機
Aさんは埼玉県出身の39歳。大卒の父、高卒の母、妹の4人家族で育った。家庭の空気は必ずしも穏やかとはいえず、家庭内には常にどこか温度差があり、進路決定においても家族が足並みを揃えることはなかったという。
大学進学について、父のスタンスは「自分で決めればいい。ただ、行くなら奨学金を借りてくれ」と放任気味だった。一方、母は「行きなさいよ」背中を押したものの、金銭的なサポートまでは手が回らなかった。進学の自由は認められていたが、その責任は自分で負うしかない——Aさんにとってそうした前提が存在していた。
では、Aさん自身はなぜ進学を選んだのか。当時のAさんに、明確な向学心があったわけではない。「特に学びたいことがあったわけでも、なりたい職業があったわけでもなかった。周りが行くから、自分もとりあえず行っておくか、くらいの感覚でした」と振り返る。
高校では進学する友人が多く、「大学には行くもの」という空気があった。奨学金の存在は高校の先生に教えてもらい、母親と相談しながら手続きを進めた。日本学生支援機構の第二種奨学金(有利子)を月8万円借りることにし、4年間で約350万円を借り入れた。
「そのときは借金という感覚がほとんどなかった。金額を聞いても実感がわかず、必要だから借りる、それだけでした」
この「借りるときの軽さ」は、Aさん個人に帰すべき落ち度ではないのかもしれない。将来の収入も生活も見通せない17〜18歳が、数百万円という負債を現実の重みとして捉えることは難しい。むしろ、「なんとなく」借りてしまう構造が自然に組み込まれている。