先月、10月からスタートしたのが、今春に大学を卒業した新人サラリーマンの奨学金返済。平均1ヵ月2万円弱の返済といわれていますが、まだ低収入の社会人1年目には重い負担。なんとかしようと、涙ぐましい努力をしています。
夜は1食42円です…〈手取り20万円〉〈東京・西荻窪〉で1人暮らしのサラリーマン、「だし汁をかけただけの白飯」に漂う悲壮感 写真はイメージです/PIXTA

奨学金利用者…大学卒業とともに300万円の借金を背負う

田中さんが就職したのは、国内の大手メーカー。名の知れた有名企業ですが、給与は人並みだといいます。今年社会人1年目なので住民税は天引きされていないことを加味すると、手取りは20万円を少し超える程度。

 

【月収24万円の大卒サラリーマンの手取り額】

■額面…240,000円

■手取り額…190,883円

(内訳)

・所得税…4,291円

・住民税…9,425円(2年目以降)

・健康保険…12,000円

・厚生年金…21,960円

・雇用保険…1,440円

 

住まいは、学生のころから住み続けている、東京「西荻窪」駅から徒歩14分のアパートで家賃は月8万円。さらに食費・雑費(日常品)、光熱費、通信費……と払っていき、さらに奨学金の返済が加わると、収入と支出はトントン。「この状態は万一のときにマズいぞ」と、最近は必死に節約に努めているのだとか。

 

――削れるところといえば、まずは食費。最近はご飯に水で薄めた白だしをかけた「だしご飯」が定番です。計算したら1食42円。かなりの節約です。

 

だし汁をかけただけのご飯を美味しいという田中さんからは、なんともいえない悲壮感が漂います。大企業勤務の大卒サラリーマンの平均年収は370万円。奨学金を利用していれば、大学を卒業とともに300万円ほどの借金を背負うことになり、結構な負担であることは明らか。さらに30代後半になるまでに返し終えるという結構長い旅路を思えば、少々どんよりしてしまうのも仕方がありません。

 

――奨学金の返済のせいで結婚できなかったとか、結婚が遅くなったとか聞くじゃないですか。そんなのは嫌なので、早め早めに返していけたら

 

と意気込みを見せる田中さん。中央労福協による『奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書』によると、奨学金返済による生活設計への影響として、「結婚」と回答したのは37.5%。ほか「出産」が31.1%、「子育て」が31.8%、「持ち家取得」が32.8%。また奨学金の返済負担に関しては、「苦しい」が44.5%となっています。

 

社会問題と化している奨学金の返済負担。昨今は、返済不要の給付型奨学金の拡大のほか、福利厚生の一環として少額棋院の返済を肩代わりする企業も増えています。返済負担を見据えて、このような制度を利用するのも有効な一手といえるでしょう。

 

[参考資料]

カネとホンネ調査研究所『奨学金についてのアンケート調査』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

中央労福協『奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書』