ケチケチした生活を送る元エリート商社マン…敗因は?
元商社マンだという伊藤さん。現役時代は、やはり羽振りがよかったといいます。
――ちょうど20代から30代にかけてバブル景気の最高潮
――タクシーをつかまえようと1万円札をヒラヒラさせて……懐かしの映像でみるあの光景、あのなかに自分もいたと思います
そんな浮かれていたバブル時代を経て、日本は不景気のどん底に。それでも景気が悪いなかでも、伊藤さんはサラリーマンの上位層であり続け、「基本給与は右肩上がりだった」と振り返ります。
さぞかし優雅な年金生活を送っているかと思えば、そうでもないのだとか。買い物に行くたびに物価高にため息をつき、家では待機電力を減らそうと、使っていない電化製品は主電源からオフ。お風呂の水はもちろん洗濯に再利用……節約を徹底し、毎月の支出を抑える努力に余念がありません。
そのような生活を送るのも蓄えが心許ないから。現役時代、とても老後の生活などイメージできなかったという伊藤さん。入ったお金はすべて出ていく……そんな生活を送っていました。特に趣味の車にはお金をかけたといいます。
――今までに車は10台くらい乗り換えました。全部高級車……今思えば、バカなことをしたと反省しています
財布を自分が握っていたのもまずかったと伊藤さん。資産形成など考えずに、気づけは定年間近になっていたといいます。
――貯金といえるほどのお金はない。でも退職金が出るから、老後はどうにかなるだろうと思っていました
しかし、どうにもならなかったのは言うまでもありません。定年と共に退職。61歳からは特別支給の老齢厚生年金があったものの、現役時代の給与には遠く及ばず、退職金3,000万円を取り崩す生活。5年でほぼスッカラカンだといいます。
――危機感を覚えた妻が今は財布を握っています
公益財団法人生命保険文化センター『2022年度 生活保障に関する調査』によると、「あなたは、ご自身やご家族の将来をどのようにしたいか、そのための経済的な準備をどうしたらよいかといった、 具体的な生活設計を立てていますか。」の問いに対して、「生活設計あり」と回答したのはわずか40.8%。年収別にみていくと、年収があがるにつれて「生活設計あり」の割合は高くなる傾向にあります。ただ年収1,000万円以上の2割強が「生活設計なし」。高給取りであっても将来を見据えて行動せず、老後に困窮することが確定的な人がいます。それが、これまで見てきた伊藤さん、というわけです。
――もし過去に戻れるとしたら、妻と結婚した当時に戻りたいですね。あのとき、妻に財布を預けていたら、こんな思いはしなかったはずです
[参考資料]