サイドFIREなら盤石!と思いきや……
今回は、すぐに目が覚めた。バッと起き上がり、お行儀よく座っている小鉄に叫んだ。
「なんか、すごい楽しそうなんですけど!」
「もちろん向き不向きはありますが、彼女はとてもうまくいっていますね」
「今までのFIREした人たちと比べて、不安感とか虚無感みたいなものがなかったね」
「いいところに気づきました。そう、サイドFIREが素晴らしいのは、社会との接点を失わない点です。多くのFIREした人たちが感じる〝虚無感〟を、彼女は感じていません。それは、人とつながって仕事をしており、社会に価値を提供しているからに他なりません。そして、その仕事が同時に安定した収入にもつながっており、それなりに遊ぶ余裕もあります」
でた、仕事最強説……。
小鉄から事例を聞けば聞くほど、「仕事をしたほうがいい」という僕が望まない結論が浮き彫りになってきてしまう。いい加減、認めるしかないのだろうか。
「さらにこの生活の素晴らしい点は、破綻しにくいことです。例えば、株価が暴落したとき、資産は目減りしましたが、彼女は冷静にWebライターの仕事を増やしました」
「おお!」
「週3日で15万円稼げていたので、週5日の稼働になれば20万円以上は稼げるようになります。となれば、資産に関係なく暮らしていけるので、右往左往しなくてよくなります。そして、生活もすこし切り詰め、余剰分を投資に回しました」
「クレバーだ……」
「しばらく週5日働いていたものの、株式市場が戻るにつれてだんだんと仕事量をセーブするようになり、元の生活に戻っていきました。そして、追加で投資したこともあり、資産は元の水準に戻るどころか増えていました」
確かにこう聞くと、サイドFIREは盤石なように思える。FIREほどじゃないにしても、自由な時間はしっかりと増える。そのうえFIREの抱えていたマイナス面を、仕事をすることで解消できる。
「とはいえ、問題点もあります。まずは、やはり彼女があまりWebライターという仕事を好きではない点です。もし、この後市場の調子がよく、働かなくてもいいだけの資産に膨れ上がったら、おそらく彼女は仕事を辞めてしまうでしょう」
「いいことじゃないか」
「それだと、今までのFIREしてきた人たちの二の舞です」
「ああ、確かに……。でもさ、なんでせっかくFIREしたのに仕事をしたくなるんだろう? 仕事をしたくなくてFIREしたはずなのに、おかしくない?」
「なにもおかしな話ではありません。仕事を一切しないと、自分の存在意義を見失ってしまう方が多いんです。ニンゲンは社会的な生き物ですから」
株式会社HF 代表取締役
ヒトデ
※本記事は『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。