実家の玄関を強行突破!44歳ひとり娘がみた「まさかの光景」
ところが、そんな孫を利用した作戦もきかなくなってしまったと加代さん。いや、すべての作戦がきかなくなり、完全にシャットアウトしてしまったというのです。
――あるときから「うちに来るときは前もって連絡しろ」と。それからしばらくすると「絶対にうちに来るな」って
最初は、家に来てほしくない、なにかがあるのかと思ったといいます。そこで無理強いをしないで、外で会うようにしていたら、しばらくして会うこと自体を拒否するようになったとか。電話やラインには反応はありますが、加代さん、明らかな異変にどうしたらいいのかわからなくなりました。
すると加代さんの夫が「昔、見知らぬ第3者が寄生して……という事件があった。もし同じようなことが起きていたら手遅れになる前に」ととんでもないことを言い出します。「まさかそんな」というものの、もし事件だったら。
いてもたってもいられなくなり、翌日、加代さんはアポなしで実家を訪れます。チャイムを鳴らしますが反応がありません。そこで加代さん、万一のために持っていた合鍵でカギを開けます。
――もう、お父さんに怒られてもいい
ガチャと玄関のドアを開けると、そこにいたのはパジャマ姿の真さん。突然の娘の訪問に怒号をあげます。
――あれほど来るなといっただろう!
すごい剣幕に一瞬ひるみましたが、ここまで来たら真相を知らずに帰ることはできません。「おじゃまするよ」といってヅカヅカと家の中に入っていきます。止めようとする真さんを振り切り、リビングへ。そこで異変に気付きます。
――なにこれ……
リビングを埋め尽くすほどのペットボトルの水。高齢男性のひとり暮らしでは必要がないほどの量です。スーパーのビニール袋に入ったままの状態で、そこら中に置いてあるのです。
――ねぇ、お父さん、これなに?
そこで観念したのか、ポツリ話し出す真さん。実は最近物忘れがひどくなり、スーパーに行くたびに「あれ、うちに水はあったか?」とわからなくなり、このありさまだといいます。さらに最近になり、急に怒りっぽくなり、人にあれこれ当たってしまうのだとか。もし孫にも同じような態度を取ってしまったら……そう思うと怖くなり、最近は人との接触を拒絶。自宅に引きこもり状態だとか。
そこまで聞いて、「お父さん、一度病院に行こう。それって認知症……」といったところで、「私が認知症なわけ、ないだろう!」と怒りだす始末。元警察官というプライドもあるのでしょうか。しかし対応は早ければ早いほどいい、何とか納得させ共に病院へ。やはり初期の認知症と診断を受けたといいます。
内閣官房の資料によると、70~74歳で4.1%だった認知症有病率は、75~79歳で13.6%、80~84歳で21.8%、85~89歳で41.4%と上昇。また認知症患者の今後の推移については、各年齢の認知症有病率が一定の場合2025年に675万人、2030年には744万人、2040年には802万人と、高齢者の5人に1人は認知症。さらに各年齢の認知症有病率が上昇する場合では、2040年に953万人、高齢者の4人に1人が認知症を発症するとされています。
誰もが「認知症かもしれない」と考えたとき、狼狽えたり、恐れたりするでしょう。しかし早めにわかれば進行を遅らせることはできます。家族の支えが必要です。
[参考資料]