65歳で仕事をやめる決断をしたが…中高年の引きこもりの実態
そして原則65歳から始まる年金受給。そこである程度の余裕資産があり、年金だけで暮らしていけたり、足りない分を貯金から取り崩したりするような生活でも、死ぬまでお金が尽きることはない……そんな確証があれば、年金受給と共に仕事を辞めるという決断をすることになるでしょう。
前出のとおり、単身高齢者の1ヵ月の支出は平均15万円程度。年金の手取りは額面の85~90%。そこから逆算すれば、額面で月17.6万円の年金を受け取ることができれば、まずは年金だけで暮らすことができそうです。さらに想定外の出費に耐えられる貯金があれば完璧です。
川島誠さんも、60歳で定年を迎えたのち、65歳まで働き仕事を辞めたひとり。
――60歳定年で、一時金で2,000万円ほどの退職金を受け取り、65歳からは22万円強の年金を受け取れる。ひとり暮らしですが持ち家ですし、ちょっと贅沢ができるくらいの貯金はあるし、死ぬまで十分暮らしていけると考えて仕事を辞めました
同僚のなかには、「まだまだ不安」だといって、65歳以降も働くことを選んだ人もいたといいます。
――不安をいったらキリがないと思い、どこかで区切りをつけることも必要かなと考えました
「年金を受け取れるようなったら仕事を辞めると決めると、なぜかウキウキした」と川島さん。独身のため、既婚の人よりも何もしがらみなく仕事に打ち込むことができたといいますが、仕事に熱中するあまり、ほかに何もできなかったという後悔にも似たものがあるといいます。
――仕事を辞めたら何をしよう
そう考えるだけで楽しかったといいます。しかし、今はどよんと沈んだ顔をしています。どうしたのか尋ねると、「2週間ぶりに人と話しました」といいます。どういうことなのでしょうか。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』によると、広義の引きこもりの出現率は40~69歳で2.97%。40~65歳に限ると、2.02%。
さらに40~65歳の人たちに引きこもりとなった年齢を尋ねたところ、最多は「60~64歳」で21.8%。「65~69歳」が15.4%と続きます。また引きこもり状態になった主な理由として「退職をしたこと」が最も多く37.3%。年齢別にみていくと「60~64歳」では38.6%、「65~69歳」では52.1%。仕事を辞めて、現役時代には時間がなくてできなかったことを思う存分できる……それにも関わらず引きこもりとなってしまう元サラリーマンが、50人に1人の割合でいるというわけです。