サラリーマンにとって、何歳まで働くか、何歳で仕事を辞めるかの決断は大きいもの。多くの人は「年金をもらえるようになって、お金の心配がなくなったら」と答えるでしょうか。しかしお金の心配がなくなったからといって、仕事を辞めるのが正解とはいえないこともあるようです。
〈退職金2,000万円〉〈年金月22万円〉65歳で仕事を辞めた元サラリーマン、楽しかったのはわずか2週間「毎日テレビばかり観ています」の苦痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンの6割が60歳定年。そのほとんどが働き続ける謎

サラリーマン人生、いくつかの大きな決断をしなければいけないタイミングがあります。そのなかでも大きな決断だといえるのが「定年」。厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』によると、定年制を定めているのは94.4%。そのうち一律定年制を定めているのは96.9%。さらに定年年齢を60歳としているのは72.3%。全企業の66%が60歳を定年と定めている計算です。サラリーマンの6割が、60歳を境に仕事を辞めるか、それとも仕事を続けるかの選択に迫られます。そして多くのサラリーマンが継続雇用制度を利用して働き続けることを選択しているのが現状です。

 

なぜ定年を迎えたのに関わらず働き続けるのか。それは年金受給開始が原則65歳だから。60歳で仕事を辞めてしまってはその間の5年間は無収入。1ヵ月の支出が単身高齢者と同等だとすると、月に15万円ほど。1年で180万円、5年間で720万円となります。老後を見据えてしっかりと資産形成をしてきたとしても、いつまで老後があるかわからないなか、できるだけ資産寿命は延ばしておきたいもの。そう考えると、収入がなく、ただお金が減っていく期間はできるだけ作りたくないものです。

 

5年間、サラリーマンを続ければ、年金が増えるというメリットも。国民年金は保険料を480ヵ月納付していればそれ以上年金は増えませんが、厚生年金は話が別です。たとえば、大卒・大企業勤務の平均的な給与のサラリーマンを例に考えると、60歳で退職した場合、65歳から受け取れる年金は、厚生年金が月13.1万円、併給の基礎年金も合わせると月19.9万円になります。65歳まで同じように働いたら、厚生年金は月14.9万円、基礎年金と合わせて21.7万円。5年働いたことで、額面で2万円ほど年金が増えます。

 

年金が頼りとなる老後の生活のなかで、月2万円の差は非常に大きいもの。

 

――無収入の期間があるのは怖いし、働けば年金が増えるのだから

 

そういって働き続けることを選ぶ人が大半でも納得です。