セクハラ、パワハラに加えて、マタハラ、カスハラ、モラハラ。さらにはスメハラやリスハラ、アルハラなど、最近はあらゆる不快なものがハラスメントとして扱われるようになりました。意識の高まりとともに働きやすくなる一方で、心を病む人もいるようです。
待てよ、これってハラスメントか…月収61万円・大手メーカー勤務の44歳課長、部下の反応を恐れ何もできず。「もう降格させてください」と号泣 (※写真はイメージです/PIXTA)

ハラスメント防止の拡大の一方で、中間管理職は…

仕事の失敗、多すぎる仕事量……昔から働く人のストレスになってきたものですが、最近、新たにストレスになっているのが、対人関係に含まれる「ハラスメント」かもしれません。

 

田中悟さん(仮名・44歳)。大学卒業後、大手メーカーに就職。昨年、課長に昇進し、給与も大台にのったとか。ちなみに厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大企業(従業員1,000人以上)に勤務する大卒課長(平均年齢48.7歳)の平均給与は月収61.5万円、年収1,055.9万円。40代前半課長に限ると、月収61.4万円、年収1,070.2万円です。

 

社内でも、また大学の同期からも「田中はノリにノッテいる」と評判ですが、その顔は浮かないものがあります。その理由を尋ねると、「ハラスメント、ハラスメントって……疲れた」「もう俺には課長はつとまらない」と、愚痴がぶわっとあふれてきます。

 

きっかけは、別の課の課長がハラスメントで訴えられたこと。周囲からも評判で、同じ課長職ながら憧れの存在だったといいます。しかしある日、セクハラの通報があり、何度も事情を聞かれ、調査も入りました。結局、濡れ衣だと分かったものの、その課長はそのことがきっかけで体調を崩し休職。そのまま退職したといいます。

 

その様子を間近で見ていた田中さんは、何するにしても「待てよ、これはハラスメントになるのではないか」と気になるように。部下の顔色が気になり過ぎて、心の中でびくびくして毎日過ごしているといいます。

 

そんな田中さんにまわりは「あまりにも気に過ぎじゃないか?」というものの、「ハラスメントって、相手次第じゃないですか……」「もう、仕事になりません。お願いだから、課長から降格してください」と号泣する始末。

 

一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会が20代〜60代の正社員を対象に行った『「ハラスメント意識」に関する調査』で「ハラスメント意識の高まりによって感じている働き方の変化」を尋ねたところ、係長よりもうえ中間管理職層では「働きにくくなった」等のネガティブな回答が多い傾向にありました。

 

【ハラスメント意識の高まりによってネガティブな変化を感じている割合】

・役員…33.3%

・部長、次長級…32.8%

・課長、課長補佐級…28.9%

・係長級…26.0%

・主査、主事級…24.6%

・役職なし…14.6%

※数値は「やや働きにくくなった」「とても働きにくくなった」「職場が暗くなった」「効率的な仕事ができなくなった」の合計

 

ハラスメントへの理解は、働きやすい環境をつくるものですが、ネガティブな思いを抱いてしまうのは、理解が及んでいないから、というのもあるかもしれません。ハラスメントを気にするあまり、心を病んでいては本末転倒。より正しい理解を深めることが求められています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年労働安全衛生調査(実態調査)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会『「ハラスメント意識」に関する調査』