(※写真はイメージです/PIXTA)

金融商品取引のトラブルに関する相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る、証券・金融商品あっせん相談センター(略称:FINMAC)がまとめた2023年度の紛争解決手続事例によれば、2023年度に取り扱った紛争解決手続事案は215件。そのうち申立人が50代60代の事案は85件、約40%の事案でシニア世代が当事者となっていたようです。被害が甚大なケースも散見され、背景にはシニア世代の多くの人が、退職金などまとまった額のお金を手にするタイミングであることが推測されます。本記事では、Aさんの事例とともに退職金運用の注意点について、オフィスツクル代表の内田英子氏が解説します。

「特別な部屋」で「特別なご提案」をしてくれた銀行員

銀行の窓口で相談内容を伝えたところ、奥の個室に通されました。銀行に行くまでは、なんで担当者は多額の退職金を受け取っているのになにもいい話しをもってきてくれないのだ、と少し腹を立てていたAさんの妻でしたが、特別感のある個室へ通され、クールダウンしてきました。

 

そして、Aさんの妻が少し緊張をしながら待っていると担当者が現れました。担当者はある商品のリーフレットを差し出してきました。「Aさまのような特別なお客様に、特別なご案内がございます」そういって差し出されたのは複雑な名称の金融商品のリーフレット。

 

「こちらの商品、預金ではなく元本保証はないものなのですが、年利率は13%で、定期預金や個人向け国債を上回る利息がつく商品です。元本割れのリスクはありますが、これまで私がおすすめさせていただいたお客様には損失が出たことはありません」担当者は断言します。

 

「特別な部屋」で「特別なご提案」をしてくれる担当者に、すっかりAさんはいい気分になってしまいました。そこで、一旦帰宅したAさんは夫にも説明し、「あなたにもいいんじゃないかしら」と夫とともに再度銀行へ行くことに。

 

その後、言われるがままに証券口座を開設。手つかずにとっておいた退職金を全額投じ、いわゆる「仕組債」を購入することになったのです……。

退職金4,000万のうち3,200万円を失う

仕組債を購入したAさん夫婦の退職金は結果的に、大きな損失を負い、4,000万円あった退職金は1年で3,200万円を消失し、800万円になってしまいました。

 

なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。仕組債の内容について触れていきたいと思います。


仕組債は、その名称のとおり特別な「仕組み」を持つ債券でこれまでさまざまな種類が発行されています。一般的な債券にはない、スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)が組み込まれているという特徴があり、多くの場合、預金商品よりも高い年利率が示されています。

 

Aさん夫婦が購入したのはEB債というもので、他社株転換可能債券と言います。紐づけられた株式の価格の推移に応じて満期時の受け取り金額、受け取り方法が異なるため、株式投資と同等の経済効果を持つといわれています。

 

なお、株式投資では価格変動による損失または利益がリターンとなりますが、EB債の場合は株式投資と同等の経済効果と言っても、価格上昇による恩恵を受けられることはありません。

 

個別の商品によっても異なりますが、たとえばよいケースでは利息を受け取りながら、元本が返ってくるという一方、最悪のケースでは、利息は受け取るものの元本割れし、加えて為替差損も加わる可能性もあるといった、利益がある程度限定されるなかで多大な損失も想定されるとても複雑な金融商品なのです。

 

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