60歳定年後もほとんどが継続雇用で働き続けるなか、「なぜ働いているのか」がわからなくなり、モチベーションがダダ下がりのシニア社員が増えています。またモチベーションの低下には、働く環境にもあるようです。
人生の先行きが見えません…「月収60万円・60歳元部長」定年後も再雇用で働き続けるも、元部下から「老害認定」でモチベ崩壊 (※写真はイメージです/PIXTA)

再雇用のシニア人材のモチベ向上を狙い給与水準引上げ

2025年、高年齢者雇用に関して、「65歳までの雇用確保の完全義務化」と「雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小」の2つの法制度が改正となります。

 

65歳までの雇用確保の完全義務化では、「65歳までの定年の引き上げ」「再雇用制度など65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの雇用確保措置を講じなければなりません。

 

高年齢雇用継続給付は、高年齢者の雇用継続を援助するために賃金の補助として支給されるもので、5年以上の被保険者期間がある60〜65歳の労働者で、定年後の賃金がそれまでの75%未満の場合、賃金の15%が支給されます。来年4月1日以降、支給率は60歳に到達する人から順次最大10%に縮小されます。

 

厚生労働省『令和5年 高年齢者雇用状況等報告』によると、全企業のうち3.9%が定年制を廃止、26.9%が定年の引上げ、69.2%が継続雇用制度を導入しています。

 

定年制の状況をみていくと、前出のとおり3.9%は定年制を廃止。66.4%が60歳定年、2.7%が61~64歳定年、23.5%が65歳定年、1.1%が66~69歳定年、2.3%が70歳以上定年を採用。また60歳定年企業において、87.4%が継続雇用、0.1%が継続雇用を望むも継続雇用されなかった人たち、12.5%が継続雇用を希望しない定年退職者です。60歳定年を迎える8人に1人だけが、60歳を機に会社を去ります。

 

松本孝さん(仮名・60歳)。10年弱、営業部長として活躍したのち、60歳定年を機に一度退職。再雇用制度で営業部をサポートする部署に配属されたとか。

 

再雇用制度は以前からありましたが、その際、正社員から非正規社員へと雇用形態が変わるため、給与は3~4割減。役職が上の人ほど減少幅は大きく、部長職であれば半減というケースもあったそうです。当然モチベーションも低下し、せっかくのシニア人材を活かせていないという議論になり、給与水準が引き上げられたとか。

 

松本さんの場合、定年前の給与は月収で80万円で、定年後は月収60万円に。役職がなくなった分は減給となったものの、それまでの規定では月収38万円と半減以上となるところでした。

 

松本さん、「お金がすべてではないけれど」と前置きしつつ、定年後の意気込みを語ります。

 

――モチベーションは全然違いますね。俄然、これまでの経験をお客様や後輩たちに還元しないといけないという気になります