60歳定年後もほとんどが継続雇用で働き続けるなか、「なぜ働いているのか」がわからなくなり、モチベーションがダダ下がりのシニア社員が増えています。またモチベーションの低下には、働く環境にもあるようです。
人生の先行きが見えません…「月収60万円・60歳元部長」定年後も再雇用で働き続けるも、元部下から「老害認定」でモチベ崩壊 (※写真はイメージです/PIXTA)

たまたま聞こえてきたシニア社員への愚痴

リ・カレント株式会社が東京都の働く50代・60代就業者に対し行った『働くシニア社員の本音調査』によると、シニア社員の幸福感要因でトップとなったのは「仕事に意味・意義を感じられること」で29.5%。「自分の強み・経験を活かして働けていること」が29.1%と続きます。

 

営業部長だった経験を活かし、定年以降は営業のバックアップにまわる――松本さん、これまでの強みも活かせるし、仕事に意義を感じられる、まさにお手本みたいな定年後のキャリアを歩んでいける……はずでした。

 

ある日、元部下から話を聞いた、正確にいうと、聞いてしまったときのこと。たまたま入った居酒屋で、元部下たちが集合。話題は定年を迎えた再雇用の社員たちに対しての愚痴でした。

 

・腹が立つ…もう上司でもなんでもないのに、なぜ偉そうなのか

・腹が立つ…「昔は~」が枕詞。あなたたちのやり方が通用したのは、何十年も前の話

・腹が立つ…シニア社員の給与水準をあげたせいで、下の世代の給与水準が下がった

 

松本さんが同じ店にいたことは、元部下たちは気づいていない様子。また名指しで松本さんのことをいっていたわけではありませんが、何度も何度も「腹が立つ」と聞こえてきたといいます。

 

――定年を迎えたシニア社員は、こんなにも煙たがられているんだ

――自分の経験を還元しようなんて、おこがましいことだったのか

 

現役社員に「老害」と烙印を押されながらも、会社にしがみつくことが幸せなのか……わからなくなったという松本さん。一気に仕事へのモチベーションは崩壊してしまったといいます。

 

前出の調査に戻り、働くシニア社員のストレス要因をみていくと、トップは34.6%で「給与・収入」。続いて24.8%「人生の先行きが見えない」でした。

 

社会人になり、仕事ひと筋。仕事=生きがいといっても過言ではなかった。そして定年以降は「自身の経験を還元すること」が働くことの意義であり、やりがいだった。なのに……松本さん、人生の先行きが見えない状態に陥ってしまいました。

 

――同期のほとんどが再雇用を選んでいたから、何も考えずに、自分も再雇用を選んだんですが……そもそも、それが間違いだったのかもしれません

 

松本さん、いま一度、定年以降の働き方、生き方を考えようとしているといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年 高年齢者雇用状況等報告』

リ・カレント株式会社『働くシニア社員の本音調査』