
40年弱の教員生活を終えて…ある日、銀行から電話
元小学校校長の柴田和彦さん(仮名・65歳)。長年の教育現場での勤務を経て、定年退職を迎えたのは5年ほど前のことでした。定年時に受け取った退職金は2,500万円。この金額は、平均的な教員の退職金額よりも高額であり、一般的には十分に安定した老後を支える資産になると考えられていました(関連記事:『47都道府県「教員の給与」ランキング…会社員より「月収が10万円」高くても悲鳴。戦線離脱者が激増の「キツ過ぎる学校現場」』)。
実際、退職金は多くの人にとって老後の生活費として大きな支えとなります。柴田さんも、その額に安心し、安定した生活が送れると確信していました。「定年後は妻とゆっくりと過ごせたらいい。そう思っていたんですよ。教員の日々は常に忙しく、妻の支えがなければ完走するのは難しかったと思います」と柴田さんは語ります。しかし、その想いはいとも簡単に崩れてしまいました。
きっかけは銀行からの一本の電話でした。
「今後の資産運用について、より効率的なプランを提案したい」と銀行の担当者。資産運用……これまで預貯金しかしてこなかった柴田さんには、ずいぶんと遠い世界の話に思えました。しかし、「定年を機に、資産運用を考えてみてもいいかもしれない」と軽い気持ちで銀行を訪ねることにしたのです。
銀行からの提案は、資産運用初心者の柴田さんには難しいものでした。定期預金と投資信託を組み合わせた「定期預金付き投資信託」、投資信託などの複数のファンドを組み合わせて資産運用を行う「ファンドラップ」……ほとんど理解できません。ただわかったのは、「銀行にお金を預けているだけ」というのはリスクだということ。超低金利の中、物価上昇により資産は目減りしてしまう。物価上昇以上の資産運用は必須だと思えました。また、「銀行が勧めてくれるのだから安心だろう」と、プロに任せたら安心という思いもあり、初めての投資にチャレンジすることにしたのです。