学校を卒業し、社会人になってから、仕事にまい進する日々が続きます。特に家のローン返済や子どもの教育費などが加わると、一心不乱に仕事、仕事、仕事……となっていくでしょう。無我夢中になっていたときに、ふと「定年」の2文字が目の前に現れます。そんな生活を思い描くか……誰もが胸を躍らせているなか、なかにはタガが外れてしまう人もいるようです。
お恥ずかしい…60歳定年サラリーマン、「退職金2,000万円」がわずか「90日」ですっからかん。きっかけは「人生初めての海外旅行」 (※写真はイメージです/PIXTA)

初めての海外旅行で体験した「カジノ」でギャンブル好きが再燃

――定年で仕事を辞めてどこか旅に出るらしい

――いや、海外に移住するらしい

 

小川さんの定年後ライフプランは、少々大袈裟な話になって、仲間内に広がっていったといいます。そして声をかけてきたのがアメリカで暮らす大学の同級生。「仕事を辞めたら、遊びに来いよ」というお誘いでした。海外への旅行も興味はあったものの、いきなり一人で海外はハードルが高い……しかし旧友がいるなら心強いと、定年後の初旅行はアメリカ旅に決定したといいます。

 

そして60歳となり定年を迎えた小川さん。退職金は2,000万円ほど支払われ、貯蓄も同程度あります。さらに持ち家。再雇用の話もありましたが、いったんゆっくりしたいと辞退し、パスポートを握りしめ、人生で初めて日本を飛び出します。

 

3ヵ月後。

 

――仕事復帰しようと考えています。幸い、また声をかけてもらって

 

あんなに「ゆっくりしたい」といっていたのに、どういうことでしょうか。実は小川さん、たった3ヵ月の間で、退職金をほぼ使い果たしたというのです。

 

きっかけは、アメリカで友人が連れて行ってくれたカジノ。学生時代、パチンコにのめり込んだことがあるという小川さん。その頃の記憶が蘇ったのでしょうか、初カジノは本当に楽しかったといいます。ただ初心者がいきなり勝てるわけもなく大損。ただ失意というよりも、どちらかといえば闘争心。「また勝負がしたい!」と思いながら、このときは帰国の途についたといいます。

 

アメリカ・ラスベガスは距離もあり、気軽に行けません。しかし調べてみると、韓国やマカオ、フィリピンなど、日本からも気軽に行ける距離の国にもカジノがあることがわかりました。そして結局、旅費とギャンブルで退職金が消えていったという顛末です。

 

――子どもたちにすごく怒られて……本当にお恥ずかしい。反省しています

 

貯蓄にまで手をつけてしまっては老後も崩壊。ギャンブルのことは考えなくてもいいようにと、まずは仕事に復帰することを決意したといいます。

 

日本弁護士連合会『2020 年破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、個人の破産理由として最も多いのは「生活苦・低所得」で61.69%。「病気・医療費」23.31%、「負債の返済(保証以外)」20.48%、「失業・転職」17.58%、「事業資金」16.13%と続きます。「ギャンブル」は7.18%。決して多くはありませんが、破産に追い込まれるケースがあるのは事実。

 

小川さんはギャンブルによってタガが外れたようになりましたが、仕事だけで実直に頑張ってきた人ほど、その反動からか定年後にはっちゃけててしまうもの。自分は大丈夫などと過信せず、くれぐれも気を付けたいものです。

 

[参考資料]

ソニー生命『シニアの生活意識調査2024』

日本弁護士連合会『2020 年破産事件及び個人再生事件記録調査』