令和3(2021)年の厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」によると、全国のひとり親世帯は母子世帯が119.5万世帯、父子世帯が14.9万世帯となっています。こうしたなか、昨今取りざたされる「ひとり親世帯の貧困問題」について、実はシングルファザーの“隠れ貧困”が増えているのです。FP Office株式会社の石井悠己也FPが、具体的な事例をもとに解説します。
息子の笑顔がツラいです…年収500万円も貯金は“ほぼゼロ”の現実。44歳シングルファザーがこぼしたSOS【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

シングルファザーが活用できる4つの「公的支援制度」

Aさんのようなシングルファザーは、下記のような公的支援制度を活用することができる。

 

1.児童扶養手当【ひとり親世帯対象】

所得制限があることから、所得水準によっては不支給となる場合もあるが、子ども1人あたり「全部支給」の場合は月額4万5,500円、「一部支給」の場合は1万740円~4万5,490円が支給される。

 

なお、全部支給の場合は所得制限に引っかかってしまう場合でも、一部支給であれば所得制限にかからないというケースもある。たとえば、扶養する児童が1人の場合、一部支給の所得制限は、年収385万円、所得230万円(令和6年11月~)となっている。 

 

Aさんは児童扶養手当についてすでに知っており、申請を行っていたが、市役所の職員からは「所得制限を超えているため、残念ながら現状では手当を受けることができません」と言われてしまったそうだ。

 

たしかに年収は約500万円で制限を超えているが、Aさんは毎年の確定申告をかなりざっくり行っていたことから、経費や控除にできるものを申告に含めておらず、所得金額にズレがあった。そのため、正確に計算し直せば所得制限以下になる可能性がある。

 

さらに、「小規模企業共済」や「確定拠出年金(iDeCo)」などを活用すれば所得を減らすことができる。

 

2.住宅手当【ひとり親世帯対象】

「住宅手当」は、ひとり親世帯で20歳未満の子どもを養育し、かつ、家族で居住するための住居を借り、月額1万円を超える家賃を支払っている家庭を対象に、家賃の一部を補助する制度だ。

 

市区町村独自の制度であるため、制度自体の有無や支給要件などは居住地に確認する必要があるが、Aさんの住む自治体では6,000円~1万円の補助が受けられることがわかった。

 

また、もし条件が許せば、Aさんの実家に住むという選択肢も検討すべきだろう。実家の援助を受けることで、家賃や生活費の負担が大幅に軽減され、貯金を増やす余裕が生まれる。たとえば、実家で生活することで月々の家賃10万円が削減できれば、年間で120万円の節約が可能となる。

 

3.「児童育成手当」

「児童育成手当」は、「児童扶養手当」と似ているが、これも市区町村独自の制度だ。18歳までの児童を扶養するひとり親世帯が対象で、Aさんの居住地では児童1人につき月額1万3,500円が支給される。

 

ただし、支給要件や所得制限等の基準は各市区町村によって異なるため、注意が必要だ。

 

4.「給付型奨学金制度」の活用

奨学金には、返済不要の「給付型奨学金」と返済義務のある「貸与型奨学金」の2種類がある。奨学金の種類によって、主に以下のような応募資格が設定されている。

 

・ひとり親家庭

・一定以上の成績を有していること

・世帯年収

・世帯資産

 

ただし、貸与型奨学金よりも審査が厳しいため、学校や各団体に問い合わせる必要がある。また、他団体との併用が可能な奨学金もあり、複数の制度に応募が可能だ。Aさんの子のように成績優秀であれば、給付型を受給できる可能性も十分考えられる。