人生最後の贅沢と思っていたが…大誤算
お金の心配もなく、一見、悠々自適な生活を楽しんでいる高橋さん夫婦。しかし、最近、大きな失敗をしたとか。それは「何も考えずに老人ホームへの入居を決めたこと」だといいます。
現在、戸建て暮らしの高橋さん夫婦。この先、維持していくのも高齢だと大変……そう考えていたといいます。そんなときに折込チラシでみたのが老人ホーム。
老人ホームというと、介護が必要になったら入居するところで、健康な人が入るイメージはなかったといいます。しかしチラシでみたのは、要介護ではない人が対象の「自立型(健康型)老人ホーム」。健康な人が入る施設です。施設によりますが、もし入居あとに介護が必要になったら退去しなければなりません。
イメージ的には、高齢者を対象としたサービス付きアパートメント。家事をしなくてもよく、また家の維持について頭を悩ませることもありません。大浴場やトレーニングジムなど、豊かな老後を過ごすための設備が充実していることも魅力のひとつです。
自立型老人ホームであれば、もっと豊かな生活がおくれるかもしれない……そう思い色々と調べ始めて見つけたのが、夫婦で入居した老人ホームでした。都心の交通至便なロケーション。食事は有名シェフが監修したもので、ダイニングは煌びやか。ライブラリーやプール、トレーニングジムと、高級ホテルといっても過言ではない設備の数々に、とにかく一目ぼれしてしまったといいます。
また決め手となったのが、介護や医療が必要になったときのサポート。隣接する施設にスムーズに入居できるというから、万が一のときも安心です。問題は費用。入居一時金だけでも夫婦で5,000万円。毎月の費用も夫婦で月50万円と、年金だけでは足が出ます。迷った挙句、「人生で一度くらい、贅沢をしてもいいんじゃない?」と、思い切って入居を決めました。それから6ヵ月。夫婦が暮らすのは、元いた自宅。結局、半年ほどで退去し、自宅に戻ったというのです。
――とにかく、落ち着かなかった
退去理由を話す高橋さん夫婦。最初は高級ホテルのような豪華な雰囲気に酔いしれていたといいますが、段々と毎日の生活が窮屈に感じるようになったといいます。
――高級ホテルだと、ラフな格好をして館内をうろつく人、いないですよね。それと同じ。毎食、ご飯を食べるのにおめかしをしないと浮いてしまうんです
窮屈に感じるあまり、段々と自炊することが多くなったとか。ただ居室の小さなキッチンでは作れるものも限られ、なかなか満足できる食事ができず……。
また入居者との関係にも悩んだといいます。入居するのはいわゆる富裕層。話をしても、バックボーンが違い過ぎて話が合わず、入居していた6ヵ月の間、誰一人と仲良くなれなかったといいます。
――高級ホテルは、たまにいくのがいいんですよ。一般の人が住むところではありませんね
5,000万円の入居一とき金のうち、戻ってきたのは3,500万円ほど。痛い勉強代でした。
内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、高齢者の3割が住み替えに対して積極的。その理由のトップは「健康・体力面で不安を感じるようになった」で24.8%でした。年を重ねていくと、自宅での生活に不安を覚えることは往々にしてあること。その際、有力な選択肢のひとつが「老人ホーム」ではありますが、初めから理想通りのホームが見つかるとは限りません。高橋さん夫婦は自宅を売却していなかったので退去し戻ることができましたが、戻る家がなければ我慢して住み続けなければならない、ということも。老人ホームの入居の際、自宅の売却時期に関しては細心の注意を払いたいものです。
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