現在、日本の不動産投資信託(J-REIT)は安定した収益を求める投資家にとって魅力的な選択肢となっています。しかし、J-REITが今後どうなっていくのか予測できず、投資を躊躇っている方も少なくないと思います。そこで本コラムでは、J-REITの仕組みや今後の展望について詳しく解説します。
※本記事の情報は2024年7月下旬時点のものです。

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J-REITの今後の展望

同じく大和アセットマネジメント株式会社の資料によると、J-REITの業績は全体的に改善傾向にあり、特にオフィス、住宅、ホテルセクターでの改善が顕著です。

 

住宅セクターでは、東京都への人口流入の加速や賃上げによる賃料負担力の上昇が背景となり、高稼働率と賃料増額の加速が見られます。特に、都心のシングルタイプの物件は回復が顕著です。ホテルセクターにおいては、インバウンド需要と国内のリベンジ消費が続いており、宿泊単価はコロナ前の水準を超過し、更なる上昇が期待できます。今後は料飲部門の回復も期待されています。

 

オフィスセクターでは、都心5区の空室率が2023年夏以降改善し続けており、平均賃料も底打ちしています。高稼働を背景に、今後は賃料を追求する方針が見られます。物流施設セクターについては、eコマースの進展により需要が拡大しているものの、大量供給により新規供給物件は空室率が上昇しています。しかし、REITが保有する既存の物流施設は高稼働が維持される見込みです。

 

今後のJ-REIT市場は、金融政策の不透明感や金利上昇懸念が上値を抑える要因となる可能性がありますが、長期金利の上昇が限定的であることを確認しつつ、緩やかな上昇が期待されています。

 

なお、上記の展望は2024年7月公表の資料を基にまとめたものです。市場は常に変化しているため、必ずご自身で最新情報をチェックするようにしてください。

 

出典:大和アセットマネジメント株式会社「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)J-REIT市場2024年4-6月の振り返りと今後の見通し」

J-REITを選ぶ際に重要な情報とは?

J-REITを選ぶ際に重要な情報とは?(画像:PIXTA)
(画像:PIXTA)

 

J-REITを選ぶ際には、さまざまな要素を考慮することが重要です。投資家は、各J-REITの特性や運用状況を詳細に分析し、自身の投資目的やリスク許容度に合った銘柄を選択する必要があります。以下に、J-REITを選ぶ際に特に重要な情報をいくつか解説します。

 

  • 運用方針
  • 投資対象の不動産タイプ
  • 分配金利回り
  • 財務状況
  • スポンサー企業

 

運用方針

J-REIT各社は、投資する不動産の種類や重点を置く地域など、運用方針を定めて公表しています。たとえば、都心部のオフィスビルに特化するのか、それとも地方の商業施設にも投資するのかといった点が明確に示されます。運用方針を理解することで、そのJ-REITがどのような戦略で収益を上げようとしているのか把握できます。

 

投資対象の不動産タイプ

J-REITが投資する不動産のタイプは、そのリスクと収益性に大きく影響します。オフィスは景気変動の影響を受けやすいものの、大型物件で安定した収入が期待できます。一方、住宅は景気変動の影響が比較的小さく、安定した需要があります。このように投資対象とする不動産タイプを理解することで、J-REITの特性やリスク・リターンの傾向を把握することができます。

 

分配金利回り

分配金利回りもJ-REITを選ぶ際の重要な指標となります。しかし、単に高い利回りを追求するだけでなく、その分配金の安定性や持続可能性も考慮する必要があります。たとえば、J-REIT各社が公表している過去数年間の分配金の推移を確認することが重要です。安定的に分配金を維持しているJ-REITは、将来的にも安定した分配金を期待できる可能性が高いです。

 

財務状況

J-REITの財務状況は、安定性と成長性を評価する上で欠かせません。特に注目すべきは、LTV(Loan to Value)、借入金の平均金利、借入金の返済期限の分散状況などです。これらの指標を知ることで、J-REITの財務の健全性や金利上昇時のリスク耐性などを判断することができます。

 

スポンサー企業

J-REITの安定性と成長性を判断するうえで、スポンサー企業がいるかどうかは判断材料の一つになります。スポンサー企業からのサポートが強力であれば、J-REITの競争力が高まり、安定した成長をもたらすことが考えられます。業界での地位や実績、J-REITへのサポート内容を事前に確認しましょう。

 

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