「ひとときの幸せ」タワマン夫婦に起きた悲劇
「子どもができたら、住宅ローンを組んで一戸建てを買おうと考えていたんです」
タワマン生活は、夫婦水入らずの「ひとときの幸せ」。そう考えていた吉山さん夫婦でしたが、思わぬ事態に見舞われます。
サービス業だった吉山さん。コロナ感染拡大の影響は避けられず、収入が減少。追い打ちをかけるように奥様のシフトも減り、夫婦ともにステイホームを余儀なくされました。しばらくは耐え忍ぶ日々が続きましたが、さすがに今の贅沢はできないと、タワマン暮らしに終止符を打つことに。
代わりに選んだのは、同じく1LDK、4階建て・家賃8万円の小さなアパート。部屋の大きさはタワマン時代とそこまで変わりませんが、駅までの距離が少し長くなりました。至便性は高い街ですので、日々の暮らしの不便は感じないはずだったのですが……。
吉山さん、「結構生活しんどいです」と語ります。
「通常の分譲マンションに引っ越して、『タワマンの生活に慣れていた自分』に気づきました。ここが悪いってわけではないんですけど、ゴミ出しはもちろん曜日で決められていて、景色もまあ“普通”です。決して良いわけではない」
「何より隣人が……人を家に呼んで深夜まで大騒ぎしていることがあるんです。タワマン時代は騒音問題が一切なかったので、この点はあまりにも盲点でした」
「生活レベルを落とすってこんなに大変なんですね。『今まで贅沢しすぎてたんだ』と思い直す日々です」
「生活レベルを落とすこと」と「それまでのプライドをなくすこと」は、自分が思っている以上に難しいものです。危機的な状況に陥っていても、積み上げてきたものにすがってしまう人も少なくありません。
残念なことに、最近ではタワマン価格がますます高騰しています。手取り30万円で「どうにかタワマンに住む」ことは少し前までは可能でしたが、現実的にほぼ不可能になってきました。
憧れのタワマン生活ですが、豊かな暮らしを続けるのは大変な様子。「それなりの年収」と「覚悟」が求められていることは、間違いないようです。