故人と相続人、双方の思いを繋ぐ生命保険。しかし、加入してそれきり、という人も少なくないのが実情です。いざというときに後悔することのないように、内容を正しく把握し、面倒に感じても時折メンテナンスを行うことは、非常に重要です。本記事ではAさんの事例とともに、相続財産の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
可愛がってくれた85歳孤独な伯母の死後、保険金1,000万円をもらうはずが…引き出しに捻じ込まれた「古びた保険証券」が知らせる、あまりに残酷な事実【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

妹を亡くし、人生の伴侶に恵まれなかった伯母

一方、Bさんの伯母であるAさんは30歳で結婚するも、本人は切望していましたが、残念ながら子宝には恵まれませんでした。40歳を過ぎたころ、仲良しの妹が急逝し、その後、矢継ぎ早に人生の波乱が訪れることになります。

 

夫の浮気

一流企業に勤めるご主人の帰宅が遅くなる日が突然増えたのです。仕事で忙しいことはこれまでもあったのですが、週末にはなにも言わずに出かけることもあり、Aさんも薄々背後に女の人の存在を感じていました。

 

夫婦の会話も減り、結婚から15年を過ぎたある日のこと、ご主人はAさんにひと言も残すことなく家を出て行ってしまいました。連絡もなく、突然に姿を消したAさんのご主人は、その後、「別の人と再婚したいから、離婚して欲しい」という実に素っ気ない連絡が一度だけありました。あまりに簡単に、そしてなんとも事務的に伝えてくる夫の姿勢を前に、Aさんはとても離婚手続きをする気持ちにはなれませんでした。

 

Aさんからすると、女性としての意地とプライドもあったのかもしれません。すっきりしないままその後も婚姻関係を維持したAさんですが、孤独を癒してくれたのは、母親を失っていたBさんとその子ども達でした。ある意味、お互い満たされない部分を、満たし合っていました。AさんとBさんは支え合い、非常に良好な伯母と姪の関係を築くことができたのです。

伯母の夫はすでに他界

そんなAさんとBさんの2人の人生ですが、家を出て行ってしまったAさんのご主人は80歳を過ぎたころに病気で他界。配偶者であったAさんは、相続手続きでも苦労をしたのですが、Bさんの助けを借りてなんとかやり切ることができました。

 

不思議なものですが、Aさんのご主人が他界したことによって、BさんはAさんの唯一の相続人となりました。もともと良好な関係だったAさんとBさんですから、この関係にはなんら違和感を感じることはありません。むしろBさんも心置きなくAさんの老後の暮らしを支えることができ、Aさんも同様にBさんを頼ることができたのです。

 

85歳で伯母も他界

やがてAさんも人生を終える時が訪れます。遺言書は準備されていなかったものの、わずかばかりの現金と小さな家が残ったため、Bさんは相続手続きを進めていきます。唯一の相続人ですから、それほど手続きにも負担はありませんでした。