庶民にとって、人生で最も高い買い物のひとつであるマイホーム。少し無理してでも叶えたい夢ではあるものの、その少しの無理が破産を招くかもしれない時代が到来しようとしています。
〈手取り月26万円〉〈ローン返済月14万円〉…ちょっと無理して「新築マンション購入」の30代幸せ家族、まさかの破産を招く「残念な理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「金利なんて、ずっと一定だろ」の終焉…知識不足が破産を招く時代、到来か?

――年金をもらうようになる前に、住宅ローンは完済したかった

 

そのような理由でマイホームを購入した井上翔太さん(仮名・35歳)、愛さん(仮名・32歳)夫婦。「新しいおうちになっても、お友だちと離れたくない!」という幼稚園生の長女の思いに応えて、転園の必要がないエリアでマイホームを検討。しかし駅から近いエリアとあって価格は高めで、「ここ、素敵じゃない?」とモデルルームを見学して一目ぼれした3LDKの新築マンションは5,500万円。用意できる頭金は800万円ほどです。

 

仮に返済方式は元利均等、金利は0.5%で、30年で返済するとすると、利息分は362万2,670円、月々の返済額は14万0,619円になります。

 

一方で翔太さんの給与は月収で34万円、年収で600万円ほど。年収に占める1年間の返済総額は28%になります。平均的な返済負担額は20%前後といわれているので、はっきりいって返済負担はかなりものになります。

 

実際に月収34万円ということは、手取りにすると26万円ほど。そこから14万円を引くと月々12万円が家族3人の生活費。やれないことはありませんが、家計は常に火の車……といったところ。

 

――条件としてはいいけど、僕らには無理かな

 

そう諦めていたときに

 

――大丈夫。あなただってこれから給与は増えていくし、私も家計を切り詰めて頑張るし

 

と愛さん。なんとも頼りになる妻の後押しもあり、購入を決めた翔太さん。長女も「新しいおうち、きれいでいいね」と嬉しそう……「本当に買ってよかった」と大満足だといいます。

 

ただ、最近、住宅購入者をざわつかせているのが、住宅ローン金利の引上げ。日本銀行が7月末の金融政策決定会合で政策金利の引き上げを決めたことを踏まえ、続々と短期プライムレートを引き上げる動きが広がっています。これは変動型の住宅ローン金利の引き上げにつながる見通しで、来年の1月ごろから、実際の支払いに適用されるというのが大方の見方。

 

仮に金利が0.5%あがったとしたら、井上さん夫婦の場合、月の返済額は15万1,170円と、1万円近くあがることに。さらに1%あがったとしたら、月の返済額は16万2,206円と、2万円近くもあがることになります。

 

そんな状況を前に、どうも井上さん夫婦はよく分かっていない様子。

 

住宅金融支援機構が行った『住宅ローン利用者の実態調査(2024年4月調査)』によると、住宅ローンの金利リスクについて、4割が「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「まったく理解していない」と回答。特に変動型利用者の50人に1人は「まったく理解していない」人たちです。


 

【住宅ローン(変動金利型)金融リスクに関する理解度】

◆適用金利や返済額の見直しルール

よく理解していない…5.5%、まったく理解していない…2.2%

◆将来の金利上昇によって返済額がどれくらい増えるか

よく理解していない…7.3%、まったく理解していない…1.9%

◆自分のライフプランに適した金利タイプか

よく理解していない…5.7%、まったく理解していない…2.4%

◆優遇金利の適用ルール

よく理解していない…7.7%、まったく理解していない…2.6%

 

20年近く金利のない世界が当たり前だった日本ですが、いよいよ金利の動きに目を光らせ、その都度対応する必要が出てきそうな気配。少々無理をしてマイホームを購入した人たちであればなおさらです。そのようななか、「金利!? よく分からないです」などとノンキなことを言っていたら、最悪、自己破産という酷い目にあってもおかしくはありません。

 

新しい住まいで思い描く、家族の幸せ。せっかく手に入れたにも関わらず、知識不足が原因で手放すことのないよう、しっかりとリスクヘッジについて考えていきたいものです。

 

[参照]

国土交通省『令和5年住宅市場動向調査』

住宅金融支援機構が行った『住宅ローン利用者の実態調査(2024年4月調査)』