今年に入って「定額減税」や「新紙幣発行」など、お金に関わる大きな変化が起きていますが、同時にこうした状況に乗じた詐欺被害も増加しています。詐欺の手口は非常に巧妙で、「自分は騙されないので大丈夫」と思っていても、高齢の親や子どもなど自分以外の家族がいつの間にか被害者になってしまう可能性もあります。そこで本記事では、最近の事例を含めた各種詐欺の手口とその対策について、村井美則FPが解説します。
定額減税の実施・新紙幣発行の裏で詐欺被害が急増中!自分や家族を守るためにいま知っておくべき「最新の手口」と「防衛策」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

詐欺に遭わないために定額減税の仕組みを把握しておく

詐欺に遭わないためにも、定額減税について正しい知識を身に付けておくことが必要です。定額減税は日本国内に住所があり、年間の合計所得金額が1,805万円以下などの要件を満たす人に、所得税から1人3万円、住民税所得割から1人1万円、合計で4万円減税される仕組みです。定額減税の対象ではない「住民税非課税世帯」や「住民税均等割のみ課税世帯」には給付金が支給されます。

 

定額減税を受ける際の手順は、以下のようになっています。

 

・給与所得者:勤務先が事務手続きを行う

・年金受給者:公的年金等の支払者である厚生労働省や共済組合などが行う

・自営業者や個人事業主:所得税は確定申告、住民税は普通徴収から減税

・定額減税しきれないと見込まれる人:定額減税しきれない額を1万円単位に切り上げて算定した「調整給付金」が支給される(※)

※調整給付金の支給対象者には市区町村から申請に関する確認書が順次送付されています。7月発送の自治体が多いようですが、届くタイミングや支給日・申請締切日は各自治体で異なります。確認書が届いた方は申請締切日までに手続きを行いましょう。

 

詐欺に遭う心理を理解し防止する

詐欺の巧妙な話術は、人間の弱い心理を突いてきます。あらかじめこの点を理解しておくことも必要です。

 

1. 恐怖感を与えたり不安にさせたりする

被害者の恐怖や不安に付け込みます。「お金がなくなってしまう」「家族に何かが起きている」といった不安をあおり、冷静な判断を鈍らせます。

 

2. 信頼性・権威性を利用する

国税庁・税務署・金融機関職員を名乗るなど、信頼性を利用します。これらの機関からの連絡は重要かつ緊急だと思い込みやすく、冷静な判断力を失いがちになります。さらに、税金や金融に関する専門用語を巧みに使い、被害者を混乱させます。

 

3. 緊急性をあおり、焦りを利用する

「今すぐお金を振り込まないと間に合わない」「すぐに手続きしないと不利になる」「口座が凍結される」などと焦らせ、冷静な判断を妨げて判断する時間を与えません。

 

4. 社会的な孤立を狙う

孤独を感じている人や周囲に相談できる人がいない人は、特に詐欺の被害に遭いやすいといわれています。独居老人が狙われる理由でもあります。

 

5. 認知機能の低下

高齢者や認知機能が低下している人は、詐欺犯の巧妙な手口に気づきにくく、被害に遭うリスクが高まります。家族がしっかりフォローする必要があるでしょう。

 

いかがでしょうか。自分は大丈夫と思っても、家族がこのような状態に陥る可能性はないでしょうか? 詐欺師は心理戦を仕掛けてきますので、自分は騙されないでなく、騙されるかもしれないと用心することが必要です。