相続について調べると、「相続税の配偶者控除は1億6,000万円」という情報が出てくると思います。これだけ聞くと、相続において配偶者はとても優遇されているように思えるかもしれません。これ自体は事実ですが、1億6,000万円という数字だけで判断すると、かえって多くの税金を払うことになるかもしれないことをご存知でしょうか? 今回は夫を亡くされた奥様からの「配偶者である自分が全額相続するべきかどうか」という相談内容を用いながら、相続税の配偶者控除について見ていきたいと思います。
「1億6,000万円控除」の罠?相続税の“配偶者控除”が絶対お得とは限らないワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫を亡くした妻から「全額自分が相続していいのか?」という相談

【今回の相談事例】

資産額:夫(死亡)1億円、妻5,000万円

 

一次相続の被相続人:夫(死亡)、相続人:妻と子1人の合計3人

二次相続の被相続人:妻、相続人:子1人

 

2024年5月にご主人を亡くされた奥様(82歳)から、こんな相談をいただきました。ご主人(死亡時84歳)の遺言書を確認したところ、 自分(=配偶者)に全額相続させる旨の内容が書かれていたそうです。しかし本当に全額自分が相続した方がいいのか、息子(48歳)にも一部資産を分割した方がいいのかがわからないとのことでした。

 

相続税の配偶者控除とは?

【今回の相談事例】

①相続税の課税価額の合計額×配偶者の法定相続分

②1億6,000万円

上記①・②のいずれか大きい金額が相続税の配偶者控除額となる

 

相続税の配偶者控除とは、配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものが1億6,000万円までであれば相続税が課税されない制度のことで、もし1億6,000万円を超えても配偶者の法定相続分までであれば相続税は課税されません。

 

なお、相続人が配偶者と子どもの場合、配偶者の法定相続分は2分の1になり、相続人が配偶者と被相続人の親である場合、配偶者の法定相続分は3分の2になります。また、相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分は4分の3になります。

 

例えば、資産が3億円あるとして、相続人が配偶者とお子さま1人だった場合、配偶者の法定相続分は2分の1なので、法定相続分は1.5億円となります。この場合、1.6億円の方が法定相続分よりも大きくなるので、1.6億円までは無税となります。

 

一方で、資産が6億円、同じく相続人が配偶者とお子さま1人だった場合、配偶者の法定相続分は同じく2分の1の3億円となります。この場合は1.6億円よりも法定相続分の方が多くなるので、3億円までは無税となります。

 

配偶者がもらう財産が相続税の課税価格の法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い金額までは、相続税がかからない、と覚えておきましょう。