理系で技術職希望も、仕方なく営業職で就職
理系出身の田中さんでしたが、希望の技術職では内定を取れず、大学卒業直前に、希望していない営業職での就職が決まったとか。「奨学金で大学に進学をしたので、就職をしないわけにはいかなかった」といいます。
きついノルマ。上司からは「売れるまで帰ってくるな!」「なんで契約が取れないんだ!」と怒号が飛ぶことも珍しくありません。毎日、何百件とテレアポをして、その先々からも怒られることもしばしば。
毎日、深夜まで働き、疲れ切っていたという田中さん。前倒しして奨学金を返し終わったのが30歳手前の頃。タイミング的にちょうど就職氷河期が終わり、雇用環境がよくなっていたとき。キツイ環境から抜け出せるチャンスではありましたが、ちょうどその頃、うつ病と診断され退職。「あの頃は、人に会うのもツラかった」と当時を振り返ります。
仕事に就くこともできず、自宅に引きこもる生活は1年が過ぎ、3年が過ぎ……気づけば40代も半ばになっていたといいます。
体調はだいぶ良くなったものの、何かのきっかけでぶり返してしまうかも……そんな不安もあり、なかなか再スタートを切ることができなかったといいますが、「このままでは人生を終えるのは嫌だ」と一念発起。活動の末、再就職が決まったといいます。
ただ、30代から40代と、大事なときのキャリアがすっぽり抜け落ちていることもあり、47歳にして月収は21万円と、大卒初任給以下。「確かに、無残ですね」と田中さんも笑うしかありません。「生まれた時代が悪かったんですよ」と自虐するも、どこか前向きです。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』で引きこもり状態のある人たちについてみていくと、引きこもり状態の期間は40代後半で「2~3年未満」が最多で17.9%。「1~2年未満」が11.9%、「3~5年」が10.4%。田中さんのように「10~15年未満」は9.0%でした。また「25~30年未満」が7.5%。一方で、他の年代では0~3%。40代後半における長期間に渡る引きこもりは、学卒時に就職に失敗→引きこもりに……というものだと考えられます。
政府は就職氷河期世代に対する支援として『就職氷河期世代支援プログラム』を実施。支援は不本意非正規が中心で、2024年までに正社員30万人増という数値目標を掲げています。目標達成は難しいとされているものの、引き続き、継続的な支援が必要です。
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