大切な友人や職場の同僚が悩んでいる姿を見たとき、どのような言葉をかけますか? 相手の状況に共感したつもりでかけた言葉が、相手を余計に傷つけているケースもあるようです。フリーランスでキャスターや社外役員などを行っている木場弘子氏の著書『次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで30年間やってきたこと~』(SDP)より、悩みを抱える相手の心を癒すために、ぜひ知っておきたい「関わり方」について、みていきましょう。
「大丈夫、なんとかなるよ」「わかる、わかる」は共感の“押し売り”…人間関係が上手くいく「相手へのベストな寄り添い方」とは?

共感の“押し売り”を引き起こしやすい、もう一つの原因

コミュニケーションにおいては、「共感」と「決めつけ」の違いを理解しておくことはとても重要です。

 

たとえば、初対面の相手と話す場合も、事前の情報から断定的に「わかっています! ○○さんは、こうですよね」と言い切ると、相手にしてみれば「そんなことないんだけど」と思う反面、違うとも言いにくい空気をつくってしまうかもしれません。そうではなく、「こういう風に伺っていますが」と、せめて間接的な表現にしてみる。それだけで、相手の方も「そう思われているようですが、実は……」と否定しやすい空気が生まれてきます。

 

自分のどこかに客観的な視点を残しておくことが、自分の感情に押し流されないための“防波堤”になります。そして、受け手の立場になってどう感じるか、というところまで思いを馳せること――くれぐれも、踏み込み過ぎないことが大事ですね。

 

もう一つ、共感の“押し売り”を引き起こしやすい原因としては、配慮を欠いた相手の事情への「踏み込み過ぎ」もあります。

 

たとえば、相手との距離がそれほど縮まっていない段階で――

 

「ご結婚されたのはいつ? お子さんは? ご両親はご健在で?」

 

といった相手の家族構成や、未婚既婚などを臆せず尋ねる人に出会うことがあります。そうしたデリケートな点を早い時期に根掘り葉掘り聞くのは、あまり感心できません。私は基本的には、本人から話してくれるまでは聞かないようにしていますので、長年お付き合いのある仕事仲間でも、既婚か未婚かを知らない方が結構います。

 

共感は、強引につくろうとすべきではありません。まして、相手の全てを知ろうというのは、全く逆の結果をもたらすことさえあります。本心から寄り添う気持ちがあれば、敢えて触れずにおくのが賢者の態度―仮に相手が話してくれるなら「うん、うん」と心のこもった相槌を打つだけで、言葉以上のメッセージは伝わるものです。

 

 

木場弘子

フリーキャスター