人気衰えぬタワマン。手に入れることができるのは高所得層などの勝ち組に限ります。しかし、買ったあとで後悔する人も少なくないとか……。一体どのような理由でしょう か? 本記事では、Aさん夫婦の事例とともに住宅ローンの適切な返済計画について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
子のいない世帯年収1,500万円の30代パワーカップル、1億円超の東雲タワマン購入も4年後に住宅ローン破産…21階から見る「最後の美しい夜景」に涙【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

たったの4年で幕を閉じたタワマン生活

タワマンでの生活が始まってから2年後、Aさんの体調に変化が起こります。 

 

Aさんは仕事中に倒れ、病院へ救急搬送されます。脳梗塞を発症し緊急手術となったのでした。幸い命に別状はなかったものの、左半身に麻痺が残り、数ヵ月の入院ののちリハビリを継続的に行うことになりました。 Aさんの職場はベンチャー系ITです。従業員の人数も少なく、一人ひとりの従業員の働きが企業の命運を握っています。ベンチャー企業であったことから、福利厚生も十分に備わっているとはいえません。これまでの成果を出せなくなった以上、働き続けることは難しく、会社での立場が苦しくなりました。退職を余儀なくされました。 

 

ですが、運良く自分の状況を受け入れてくれる新しい職場が見つかりました。ひとまずは転職先が見つかり安堵したAさんでしたが、年収は以前の3分の1程度となってしまったのです。 

 

Aさん収入の減少による収支の変化 

Aさん 年収 300万円 

妻  年収 600万円 

 

Aさんの収入の減少の影響は想像以上に大きく、次第に毎月の収支は赤字となっていきました。頭金と同じくらいの貯蓄はあったものの、毎月の赤字を補填することでじわじわと残高が減っていく状態が続き、やがて2人は強い不安感を覚えるようになります。 購入から4年後、ついに2人はマンションを手放す決断します。 

 

引っ越しの前夜、Aさんは「あっという間だったね」と21階から見る最後の美しい夜景を妻とともに眺めながら涙します。こうして、Aさん夫婦の短いタワマン生活は幕を閉じたのでした。

住宅ローンを手放す理由「収入の変化」 

タワマンに限らず、住宅ローンを返済できずに破綻してしまう人の例を見ると、「収入の変化」が挙げられます。 収入の変化と一概にいっても、転職、離婚、病気などさまざまな理由があります。 

 

住宅ローンの借り入れから完済まで、ほとんどの人が30年以上の長期にわたる返済を行います。そのあいだにはさまざまなライフステージや体調の変化なども考えられます。 購入前にはあらゆる可能性をイメージしておくことが必要です。