昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、入居が決まれば安心、というわけではありません。「お金が足りない……」そんな理由で、最悪、退去しなければというケースも。みていきましょう。
月収12万円〈ふたりの幼子を抱える〉35歳シングルマザー「生活保護のままでいたい」の衝撃本音の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

月2万世帯が生活保護から脱しているが…35歳シングルマザーが抱える懸念

2年前に離婚し、5歳と3歳の子どもを育てる35歳のシングルマザーも生活保護を受けているひとり。生活扶助額は14万円、住宅扶助が5.3万円、さらに児童養育加算が月2万円ほど。女性は月12万円の収入との差額、月9万円ほどを毎月受け取っているといいます。

 

ある日、元夫は「疲れた」と言い残し失踪。捜索願を出すほどの騒動になったといいますが、その後、あっさりと見つかったとか。しかし、その後、自宅に帰ってくることはなく、そのまま離婚に向けて話し合ったとか。実は元夫、家族に内緒で借金を重ね、もう何もかも嫌になって失踪……これがことの顛末。

 

――子どももいるのに、何て無責任な

 

愛情は一気に冷めたうえ、借金の影響が自分たちにも及んでくることを考え、スピード離婚を果たしたといいます。問題はそのあと。離婚を急いだこともあり、その後の生活の準備はまったくしておらず……結婚前からの自身の貯蓄を取り崩しながら、働き口を探すことに。しかし女性いわく、大したキャリアもなく、しかも小さな子どもがいるのに雇ってくれるところはなく、やっと見つけたのが、いまの事務職バイト。ただ子どものことで突発的に休むことも多く、月収は色々足して12~15万円がやっとのところ。これでは生活が厳しいと、生活保護の申請をしたという顛末でした。

 

厚生労働省『被保護者調査』によると、2024年3月時点、生活保護を受けるのは全国で165万0,379世帯、201万8,671人。そのうち母子世帯は6万2,828世帯でした。

 

厚生労働省では生活困窮者の自立を促進するために、さまざまな施策を行っていて、そのひとつが生活保護制度における自立支援の強化。たとえば貧困の連鎖を断ち切るために生活保護世帯の子の進学支援を行ったり、単独での居住が困難な人への生活支援を行ったり。その効果もあるのでしょうか、今年3月には、保護開始世帯が1万9,322世帯あったものの、保護廃止世帯は2万1,355世帯ありました。

 

前出も女性も今の生活から抜け出そうと必死かといえば、そこには複雑な心境もあるとか。

 

――生活保護から脱却すると、税金や社会保険料など負担が大きくなり、また生活できなくなる心配があります。制限はあるものの、生活保護を受けながら子育てを続けたほうが、正直、安心なんです

 

生活保護から脱却後、生活が再び不安定になるケースは珍しくありません。そこで「就労自立給付金」や「勤労控除」などの自立支援制度が強化されていますが、それでも母子が生きていくには厳しい環境が続いています。「生活保護のままでいたい」という本音がこぼれるのも納得です。

 

[参照]

総務省統計局『消費者物価指数(CPI)』

厚生労働省『生活保護制度』

厚生労働省『被保護者調査