耐震性がないと判断も「お金は出せない」と反対多数
1970年代に建てられた、築50年近い都内マンションで暮らす77歳の女性も「引っ越したくても引っ越せない」というひとり。亡くなった夫が必死に働いてローンを返済。慎ましく老後を過ごしてきたマンションは、家族との思い出もたくさん詰まった愛着のある住まいです。
――最期までここで暮らしたいと思っていましたよ、つい最近までは
心変わりのきっかけは、旧耐震マンションの耐震診断。東日本大震災のあと、建物の耐震性が叫ばれるなか、女性の住むマンションでは耐震診断を実施したとか。その結果、「耐震性がない」と判断されたといいます。
――直すこともできないなら、診断をしないほうが良かったのに
耐震改修の実施に向けての機運は、もちろんありました。もし大地震が起きたら、住んでいるマンションは崩れてしまうかもしれないのですから……しかし、問題はその費用。一部の入居者から反対意見があがり、話がまとまらなかったというのです。
女性も月13万円の年金で暮らすなか、プラスαのお金がかかるのはかなり痛いとのこと。先の生活を考えると、貯蓄も心許ない……。
――このマンションに住んでいるのはお年寄りばかり。直したところでその先、何年住めるか分からないので、余計にお金を払いたくない、という思いも、分からなくはないんだけど
明日にでも来るかもしれないといわれる首都直下地震。本当に来たとしたら、このマンションは耐えられないと烙印を押されたようなものです。
――押し潰されて死ぬのは痛いだろうに……ほんとイヤ
結局、耐震改修工事は棚上げ状態で今に至る女性が住むマンション。女性は住み替えも検討したといいますが、引っ越し費用などを考えると断念せざるを得ないという結論に。
――終の棲家として考えていたマイホームが、こんなことになるなんて
いつか来る地震に怯える毎日に、絶望感を覚えると女性は嘆きます。
前出のマンション調査によると、旧耐震マンションの耐震診断を行ったマンションは31.6%。診断を行った結果、4分の1のマンションが「耐震性がない」と判断されました。これらのマンション、45.8%は耐震改修を行い、また29.2%は今後実施する予定だといいます。残る25%のマンションは「実施する予定はない」と回答しています。
マンションによって事情はさまざまですが、多くの人がそれぞれの意見をもつマンション。防災を考えるならすぐにでも工事をすべきですが、入居者の意見がまとまらず進まない例は珍しくありません。
遅々として進まない、マンションの耐震工事。そこには引っ越したくても引っ越せない、取り残された高齢者の存在があります。
[参照]