意気消沈の父…娘の励ましで元気を取り戻したが
10年前に母を亡くしたという、都内在住、48歳の女性。今年、古希を迎えたという父は、地元、九州で1人暮らしを続けています。
女性が幼少だったころ、父はまさに仕事人で、家のことは母にまかせっきり。家にいても新聞やテレビを見ているだけで、家事をしているところは一度も見たことがありませんでした。そのため、母が亡くなり、父がひとり残されたときは、きちんと暮らしていけるのだろうか、と不安になったといいます。
長女である女性は、ほかに妹と弟がいましたが、女性と弟は東京に、妹は関西に出てきていたので、九州の実家で父をサポートというわけにはいきません。
――お父さん、ひとりで大丈夫? よかったら、こっち(東京)に来ない?
そう父に言ってみたものの、「ひとりのほうが気楽でいい」と言い、頑として首を縦に振ることはなかったといいます。
しかし、どちらかと言えばひょうきんだった父、その姿はすっかり影を潜めて、あからさまに意気消沈しているのが、たまにかける電話からも伝わってきたといいます。また実家の近所の知り合いからも「お父さん、奥さんが亡くなってから家に引きこもりがち」と心配する電話があったとか。そのため、女性は1ヵ月1回ほど実家に帰省。2、3日泊まって父の世話をすることを続けたといいます。
そんな女性の気遣いも功を奏したのか、徐々に父は元気を取り戻し、母の死から5年ほど経ったころには地域活動にも熱心な昔のような父に戻ったといいます。
そんなある日のこと、突然、父が東京の女性宅に遊びにきたといいます。突然の訪問に、その理由を尋ねると、「海外旅行に行っていた」「お土産を渡したいから帰りは成田便を利用した」とのこと。パスポートを持ったこともない父が海外……なんて珍しいと思って聞いたところ、初海外だったとか。
――すごい! 初めての海外旅行だったんだ
――そう、ハネムーンも兼ねてフィリピンに
――ハネムーン!?
何やら雲行きが変わってきた気がした女性。さらに話を聞いていくと、父から「事後報告になって申し訳ないが……実は再婚したんだ」という衝撃告白。寝耳に水とはこのこと。女性は思わず絶叫してしまったとか。
どこで知り合ったのか尋ねると「よく行くパブでな」と父。相手は何歳か聞くと「27歳」と父。フィリピンには女性の家族への報告も兼ねてのものだったとか。さらに再婚相手には子どもがいて、近々、養子縁組をしようと考えているといいます。その理由は「連れ子の場合、相続の権利がないから」。
――再婚をする以上、責任を持たないとな
怒涛の展開についていけない女性。父が幸せならそれでいい……よく再婚する親にむけられる子のセリフ。とてもじゃないが、簡単にかけることはできないと感じたといいます。