家族の大黒柱の万が一の時、遺族への社会保障となるのが「遺族年金」です。その認知度は8割弱。ただ、認知度の割に、詳しい仕組みは知られているとは言い難い状況。ポイントを押さえておかないと、その万が一のときに「えっ、理不尽……」と戸惑うことになります。みていきましょう。
年金18万円・68歳夫を亡くした67歳の元・共働き妻、「遺族年金額」に強烈な怒り「あまりに理不尽では」 (※写真はイメージです/PIXTA)

理不尽な遺族年金…夫に年齢制限のある「遺族厚生年金」

厚生労働省の資料によると「遺族年金の仕組みがあることを知っている」と回答したのは77.3%。遺族年金を知らない人が一定数いることがわかります。

 

では遺族年金があることを知っている人のなかに、しっかりと仕組みまで知っているという人はどれくらいいるでしょうか。遺族年金は家族の大黒柱に万が一のことがあった際の公的な保障。遺族の生活をサポートしてくれるものなので、どのようなものなのか、基本的なことくらいは知っておきたいもの。

 

老齢年金は、国民年金に由来する老齢基礎年金と、厚生年金に由来する老齢厚生年金の2階建て構造になっていることはよく知られていますが、遺族年金もその構造は同じ。国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金の2階構造で、(亡くなった人が)会社員や公務員であれば、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金、どちらももらえる可能性があります。

 

もちろん老齢年金とは異なる考え方があります。

 

遺族年金は亡くなった人と「生計を同じくしていること」が必須。生計を同じくしているとは、簡単にいうと生活をするための財布が一緒であるというイメージ。そのため別居であっても財布がひとつと認定されたら、遺族年金を受け取れる可能性があります。逆に、同居していても財布は別と認定されてしまうと、遺族年金はもらえなくなるわけです。

 

また遺族年金を配偶者が受け取ることを前提に考えると、遺族基礎年金には「子がいること」が条件で、子のいない夫婦の場合は受け取ることができません。一方、遺族厚生年金には「子の要件」はなし。子が独立し、年金をもらうようになった段階であっても、夫を亡くした場合、妻は遺族厚生年金をもらえる可能性があるのです。

 

そんな遺族年金、たびたび「理不尽さ」で話題になることがあります。

 

そのうちひとつが、遺族厚生年金における夫の年齢制限。遺族厚生年金は、妻の死亡時に55歳以上の夫に支給されますが、60歳までは謎の支給停止。一方、妻にはそのような年齢条件はありません。現在、遺族年金における男女差は違憲だと、裁判で争われているので、そんな理不尽があることは知られるようになりました。

 

*遺族基礎年金を受け取れる夫で妻の死亡時に55歳以上の場合は、60歳までの支給停止は行われず、60歳前でも遺族厚生年金を受け取れる。また妻の死亡時に55歳未満の夫は遺族厚生年金を受け取れないが、子どもが遺族厚生年金を受け取れる