2024年5月の年金部会では、国民年金の第3号被保険者制度が議論された。そこで、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫氏が当制度の仕組みを確認し、廃止した場合の影響や廃止以外の方策を検討する。
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ポイント解説(3)廃止以外の方策(縮小策):厚生年金の適用拡大と収入基準の引下げ(厚生年金の要件との連動)
前述の例は第3号被保険者に収入がない場合だが、実際には第3号被保険者のうち約半数が就労している。この場合は、保険料の対象にならない収入が存在する点で共働き世帯より有利になり、第3号被保険者が収入基準(年130万円)を考慮して就労調整を行う要因となる。
これを改善するには、厚生年金の適用拡大を進めるのと同時に、第3号被保険者の収入基準を下げる必要がある。共働き世帯との公平性を考慮すれば、第3号被保険者の収入基準を厚生年金の短時間労働者の賃金基準(現在は月8.8万円。年間で105.6万円)に揃え、将来も連動させるべきだろう。第3号被保険者の収入基準には給与以外も含むため両基準の完全な統一ではないが、金額の統一により、分かりやすさと不公平感の改善を期待できる。