2024年5月の年金部会では、国民年金の第3号被保険者制度が議論された。そこで、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫氏が当制度の仕組みを確認し、廃止した場合の影響や廃止以外の方策を検討する。
(写真はイメージです/PIXTA)
ポイント解説(2)廃止した際の影響:片働きや低所得者が不利
当制度を廃止して専業主婦[夫]が国民年金保険料を納める制度にした場合は、現行制度よりも片働き世帯の負担が増え、夫婦世帯間での公平性が崩れる(図表2)。特に、本人負担で見ると、大きな違いになる*4。
また、世帯間で負担を公平にするために全加入者が国民年金保険料を納める制度にすると、厚生年金における所得再分配機能がなくなるため*5、収入が少ないほど現行制度よりも負担が大きくなる(図表3*6)。
*4:会社負担分は、第3号被保険者の基礎年金拠出金が不要になる分だけ厚生年金の保険料率が下がれば、軽減される。
*5:現行の厚生年金では、定額型である基礎年金の費用を報酬比例型の保険料でまかなうため、所得再分配効果がある。
*6:他の図表と世帯収入を揃えているため分かりづらいが、共働き世帯の片方(年収300万円)と年収600万円の単身世帯の負担の比を見ると、図表1や2では両者の収入に比例して1:2だが、図表3では定額部分があるため1:1.7である。