単身赴任の夫が急逝、それでも認知症の義父を放っておくことはできない…
義父の認知症は、ゆっくり、しかし確実に進行。そんなときに、夫に転勤の話が舞い込んできました。しかし認知症の義父のことを考えると、家族で引っ越しは考えられない……夫には単身赴任してもらうという選択肢しかなかったといいます。
そして夫、単身赴任2年目の冬に急逝。突然のことに女性のショックは大きく、ひたすら号泣。しかし悲しんでいる時間は、認知症介護の前にはなかったといいます。
――そんなときでも、義姉たちは一切助けてくれなかった
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、「要介護者等」と「主な介護者」との同別居の状況をみると、「同居」が45.9%。さらに「同居の主な介護者」について、「要介護者等」からみた続柄をみると、「配偶者」が最多で22.9%、次いで「子」が16.2%。「子の配偶者」は5.4%でした。当然、高齢夫婦のどちらかが要介護になった際には配偶者が「主な介護者」となりますが、すでに配偶者が他界していれば、「子」や「子の配偶者」が「主な介護者」になるのは必然。
また要介護度別にみた「同居の主な介護者」の介護時間の構成割合をみていくと、「要介護1」では介護時間が「ほとんど終日」の割合が11.8%なのが、「要介護2」では17.0%、「要介護3」では31.9%、要介護4」では41.2%、「要介護5」では63.1%と増えていきます。
当時、義父は要介護3。理解力や判断力が低下し、一人で安全に生活するのは難しい状態でした。そして夫の急逝から3年後の先日、義父は80歳でこの世を去ったといいます。
――最後の1年は要介護4となり、頻繁に徘徊をしたりと、本当に大変だった
と女性。「もう無理」と想いながらも、ここで投げ出してしまったら、亡くなった夫に顔向けできないと思い、最後まで介護をやり切ったといいます。そんなときに、また義姉。
・義父の遺産は、少しの貯金と実家(=女性家族が住んでいる家)だけ
・相続人は、2人の義姉と、女性のふたりの子
・実家を売っても大したお金にならないから、女性のふたりの子は相続放棄をしてほしい
夫が亡くなったことで、その相続権は子(義父からみたら孫)に受け継がれましたが、義姉の言葉はあまりに身勝手。怒りで震えたという女性。
――実家を売るって、私たちにこの家から出ていけと言うことですよね? わたし、10年もお父さんの介護をしてきたんです。まず、何か、ひと言でもないんですか?
女性の言葉に対し、義姉たちは「えっ、あなた(=女性)も何か欲しいの? そんなに欲張りな人だと思わなかった」と、想像もしなかった言葉が女性に投げかけられたとか。「お金がほしくてお義父さんを介護してきたわけじゃありません!」と反論するも、涙が止まらなかったといいます。
被相続人の親族のうち、被相続人の子の配偶者などの相続人でない人が、被相続人を無償で療養看護するなどして、被相続人の財産の維持、または増加について特別の寄与をした場合に、相続人に対し「特別寄与料」を請求することもできます。しかし、女性にそんなつもりはなく、またふたりの息子たちも
――相続放棄しよう、それで伯母たちと縁を切ろう
と言ってくれたとか。女性は「やっとすべてから解放されて、亡くなった夫のことをしっかり想うことができそうです」と、前向きな言葉を口にしています。
[参考資料]