昨今、問題視されているカスタマーハラスメント、通称カスハラ。さまざまな影響が報告されていますが、なかには悪質なカスハラによって閉店に追い込まれるお店も。そんなカスハラ加害者は、どのような人なのでしょうか。みていきましょう。
〈月収77万円〉50代のエリートサラリーマン、威圧的な態度で店員を一喝も「私、間違えてます?」と無自覚【カスハラの実態】

カスハラをする「カスハラ客」…50代男性、しかも高収入という特徴

そもそもカスハラとは? 厚生労働省は『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』のなかで、以下のように記しています。

 

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先など(以下「顧客等」といいます。)等からのクレーム全てを指すものではありません。顧客等からのクレームには、商品やサービス等への改善を求める正当なクレームがある一方で、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。

 

そんなカスハラをする加害者はどのような人なのでしょうか。株式会社エス・ピー・ネットワークが行った『カスタマーハラスメント実態調査(2023年)』によると、「直近1年以内に遭遇した不当要求やカスハラの相手」について、まず性別でみると「男性」が81.1%と圧倒的。また推定年齢でみていくと、「50代」が40.6%と最多。「40代」22.3%、「60代」17.2%と、40代以上が実に8割を占めます。

 

以前より「カスハラ客はおじさんに多い」といわれてきました。東洋大学・桐生正幸教授が2020年に行ったインターネット調査では、カスハラ客で多いのは「45〜59歳」で「年収1,000万円台」としています。つまり、高給の中高年男性はカスハラ客になりやすい傾向にあるということです。

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大企業勤務のサラリーマンの平均給与は、50代前半で月収46.1万円、年収800.8万円。50代後半で月収48.0万円、年収835万円。大企業勤務というだけでは、50代で年収1,000万円台というのは難しいようです。必要なのはさらに肩書。大企業勤務の課長だと、50代前半で月収60.7万円、年収1,044万円と、1,000万円台に到達します。さらに部長だと、50代前半で月収77.1万円、年収1,363万円と、余裕で1,000万円台といったところ。

 

大企業の部長と、サラリーマンのなかでもエリートと呼ぶにふさわしい肩書を手にしたとき……「自分は選ばれた人間なんだ」と選民意識が芽生えてしまい、ついつい「俺は客だぞ!」「責任者を出せ!」などと店員に対して威圧的な行動や言動をとってしまう。しかし

 

――えっ、私、何か間違えたこと、してます?

 

カスハラ客になっていることにも無自覚……そのようなケースは珍しくありません。ただカスハラは程度が過ぎると、脅迫罪や恐喝罪、強要罪、威力業務妨害罪などで訴えられる可能性も。せっかく努力をして頂点へとのぼりつめたエリートサラリーマン。カスハラで人生を棒にふることのないよう、自身の行いを冷静に見つめてほしいものです。

 

[参考資料]

厚生労働省『職場のハラスメントに関する実態調査』

株式会社エス・ピー・ネットワーク『カスタマーハラスメント実態調査(2023年)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』