「十分な貯金があるので老後は大丈夫だろう…」そう思っていても、長寿時代のいまは注意が必要です。特に女性は長生き傾向にあり、油断をしていると資金が尽きてしまうリスクがあります。本記事では、一流企業に長年お勤めの加藤陽子さん(仮名・55歳女性)の事例をもとに、老後破産を未然に防ぐ対策についてMimi LIFE PLANNING OFFICE代表のFP村井氏が解説します。
一流企業に勤める55歳女性、「預金2,500万円」なのに老後破産の危機…長生きが招く想像以上の資産減少に驚愕するも「いま行動できてよかった」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

一見安全に感じる預貯金の「インフレリスク」を知る

要因3に挙げた「預貯金の割合が多い」ことは、いったい何が問題なのでしょうか?

 

数字的に見える額が減らないので、元本保証である預貯金は安心感があります。しかし、預金の利率よりも物価上昇率が高い場合、持っている資産価値が目減りする「インフレリスク」があります。

 

2024年2月の消費者物価指数(※3)の総合指数は2020年を100として106.9へ上昇。前年同月比は2.8%上昇しています。2024年メガバンクの定期預金も金利が少し上昇したとは言え1年物で0.025%(2024年4月現在)。物価上昇をカバーするには程遠い金利です。

 

インフレとはモノの値段が上がることです。言い換えると、1年前に1,000円で買えたものが、いまは1,000円を持っていっても買えず、1,000円の価値が下がったとも言えます。元本保証の安全資産のみで40年~50年後も問題なく暮らせるかどうかは、お金の使い方だけの問題でないことがわかるでしょう。

 

それでは、インフレリスクを回避する方法はあるのでしょうか。株式などは価格変動のリスクが大きく「怖いもの」と感じるかもしれません。ただ、中長期的な視点でみると「インフレヘッジ(インフレの影響を避けるための手段)」の効果があるとされています。


なぜ株を持つことがインフレヘッジになるのでしょうか。

 

インフレで全体のモノの値段が上昇➡上昇分を価格に反映➡同じ個数なら価格上昇分の売上金額が増加➡利益が増加、という流れになります。株価は企業の業績を反映した動きをするといわれますから、売り上げが上がれば中長期的にはその企業の株価は上昇すると考えられます。


もちろん、短期的には買い控えなどがあるかもしれません。ただ、必要なものは買うほかありませんから、中長期の視点でみると株式や株式が入っている投資信託などは「インフレヘッジ」の効果があると言われているのです。